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- 阿川佐和子さん、きもの姿がぐっと“映え”るポージングで「撮られ美人」に
きものでおめかしして記念写真を撮ってもらったら、なんだかオバサンチックな映りになっちゃったと、がっかりすることがある。はてどうすれば楚々とした優雅な姿になれるのか。このたびはそのレッスンである。
かつて某女優に教わった。
「女の色気は対角線!」
そのとき、私は右先に置かれたペットボトルを右手を伸ばしてつかんだところであった。
「そういうことするから色気がないって言われるの! 右先のものは左手を伸ばして取る。左のものは右手で取る。常に身体が対角線になることを意識して動きなさい」
なるほどと納得し、ときどき思い出して実行してみるものの、疲れてくると気が抜ける。ことにきものを着ていると、どうしても、きつい、重い、しんどい。いつのまにかお尻を落とし、お腹を前に突き出して、よく綾小路きみまろさんが表現する「おばあちゃんの格好」そのものになってしまう。まあ、洋服を着ていても、そうなりますけどね。
とはいえ、雑誌に載っているモデルさんのような「決めポーズ」をシロウトが真似しても、わざとらしくなりそうだ。バレリーナのごとき手先のかたちを作ってみたところで、知人友人家族親戚に笑われるだけである。ごく自然に、「あら、おきもの、着慣れていらっしゃるのね」と褒められるようなポーズを作るには、どうすればいいだろう。
そこでカリスマ着付師のイッシーにご指南いただいた結果、こんな手順にまとまった。
まず、正面を向いて直立!
続いて右肩をうしろへ二十度ほど引いて、斜めを向く。対角線づくりだ。
そのとき、右足を少し前へ。左足を少し後ろへ。ついでに内股気味。
角度が決まったら、おへそとお尻の穴をキュッと引き締めて、頭を天井から吊られている意識で背筋を伸ばす。
決して顎や肩に力を入れない! フウッと軽く息を吐き、お腹とお尻以外の身体全体を柔らかくする。
そしてさりげなく、首だけ回してカメラに向かって、はい、チーズ!
立ち姿の基本を身につけたら、補足として覚えておかねばならないことは、せっかくの着物をいかに美しく見せるかということだ。
その一つがバッグの持ち方と位置。ギュッと強く握りしめてはいけない。案外、手先に性格は表れるものだ。そっと持つ人とギュッと握りしめる人とでは、おのずと優雅さに差が出る。ちなみに私は後者である。
続いてバッグの位置。バッグで帯を隠さない。移動中や立ち話をするときはかまわないけれど、「はい、写真撮りますよー」と号令がかかったら、ただちに帯の前から離して持つ。それだけで、きもの全体が美しく撮られることになる。
もう一つ気にするべきは、袖の落とし方であろう。中の襦袢がはみ出ていないか。帯に引っかかってうしろに巻かれていないか。ささいなことのように思われるかもしれないが、「気にかけていなさい」とイッシーから強くお達しがあった。
あとは、きものにかぎった話ではないけれど、笑顔の作り方だろう。「チーズ」とか「1たす1は?」とか「キムチー」とか、笑顔を作るコツはいろいろあるが、私のオススメは、シャッターが下りるまでカメラを見ないこと。そっぽを向いて、カメラマンと呼吸を合わせ、 「1、 2の3!」
この「3」の瞬間にカメラに顔を戻してニコッ。ほら、自然な笑みになったでしょう! 顔が固まらないんです、この方法だと。
ただし、事前にカメラマンさんと打ち合わせておくことが大事です。勝手に動き回らないように、私みたいにね。
撮影/森山雅智(人物) ヘア&メイク/田中舞子(VANITÈS) 着付け/石山美津江 構成・取材/樺澤貴子