安心・安全なくつろぎを求めて プライベートを楽しむ極上の宿 第6回(全11回) 国内外を自由に旅することがままならなくなった今、真のリラックスを求めて、旅先の宿を選ぶ基準は大きく変化しています。1日1組もしくは数組の小さな宿、離れや独立したコテージが充実した宿を日本全国で探しました。小さな宿ゆえにそれぞれのコンセプトが明快な個性派揃い。厳選の10軒にご案内します。
前回の記事はこちら>> 1829(文政12)年に畳屋として建てられた旧喜多邸の離れを改修した、一棟貸し切りの「木の間」。数寄屋のお座敷でくつろぎ、木桶の湯船に浸かりながら、庭やお堀の四季折々の景色が楽しめる。八幡堀をわが庭にするロケーションで暮らすように憩う
【1日2組】旅籠 八...(滋賀・近江八幡)
安土城の城下町、近江商人の発祥の地として知られる近江八幡。往時の栄華を色濃く残し、国の重要文化的景観である八幡堀沿いに建つ築190年の商家を改修し、誕生したのがここ「旅籠 八...(わかつ)」です。
宿が佇む八幡堀は、戦国時代に作られた水路。水運の発展によって町が栄え、堀沿いに残る旧家の屋敷や白壁の蔵が往時の様子を伝えている。近年は観光名所となり、散策や水路巡りもできる。水と火が織りなす近江の美味も一興
石、木、火、水からなる自然と、日本の古きよきものを生かした2つの客室と食事処、茶房からなり、建物や美食を通じて近江の豊かな暮らしぶりや文化を体感できます。
京都の鞍馬石をくり抜いた岩風呂。体を包み込むサイズ感で、長湯したくなる心地よさ。空間はいずれも個性的で、古い梁や土壁を残す「石の間」は鞍馬石の岩風呂を配した圧巻の客室。数寄屋の造りの「木の間」は部屋から見える八幡堀や庭に心癒やされる一棟貸し切りの離れです。
カウンターの前の炉で藁の香りをつけて提供する「近江牛の炙り焼き」。たたきと炙り焼きの2種盛りにされる。手長海老やビワマス、赤こんにゃくなど近江の幸を主に盛り合わせた八寸。ソムリエが常駐し、地酒も充実。堀沿いに立つ土蔵にカウンターをしつらえた「日本料理 溜ル」では、ライブ感たっぷりに目の前で調理し、食材への思いとできたての味が供されます。
食事は滋賀県の水、煮えばなの白飯から始まり、近江牛、湖魚と若狭街道を通った魚介、無農薬栽培の地野菜など、食材のほとんどが滋賀県産。
煎茶と梅干し、茶葉にポン酢をかけて味わった後に登場する朝食。おばんざいの小鉢、焼き魚、土鍋炊きご飯など、素朴で温もりが感じられる料理が並ぶ。一方、朝食は、お茶と梅干しで体を整えてからいただく、上質で体に優しい献立です。
お堀沿いや町を散策しながら暮らすようにのんびりと滞在。従来の宿とはひと味違う、新鮮で印象的なステイが楽しめます。
茶房「氵サンズイ」は宿泊者以外も利用でき、近江の煎茶などを和菓子とセット(800円)にして提供。夜は宿泊者限定のバーになる。旅籠 八...(はたご わかつ)滋賀県近江八幡市玉屋町6
TEL:0748(36)2745
基本料金:「木の間」1室2名利用で1泊2食付き2名15万円、「石の間」同12万円(ともにサービス料別)
URL:
https://wakatsu.jp/IN 木の間13時、石の間15時/OUT10時 全2室
〔特集〕安心・安全なくつろぎを求めて プライベートを楽しむ極上の宿
表示価格はすべて税抜きです。
撮影/本誌・坂本正行 取材・文/西村晶子
『家庭画報』2021年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。