――『カメレオンズ・リップ』では、そこにさらに、訳アリの登場人物たちの騙し合いが交錯します。何が嘘で何が真実なのかわからない。松下さんご自身は嘘をつくのは上手ですか?「下手です。僕も格好をつけたいばっかりに、たまに小さな嘘をついていた時期があったんですね。たとえば、音楽の学校に通っていた頃、学生をやりながら外でライブ活動をしている人たちがめちゃくちゃカッコよく見えて、“今日、授業が終わったら何か用事あるの?”って聞かれたときに、何の予定もないのに“今日はちょっと渋谷でライブがあって”と言ってみたり(笑)。でも、そういう嘘は結局バレて、剥がれ落ちる。嘘をついたり、格好つけたりしても、ひとつもいいことはないんだなと学びました」
――そういう嘘は、バレるとカッコ悪いですしね。でも、松下さんは器用ではありますよね? 歌もダンスも、絵も陶芸も上手で、自分で曲も作ってしまうなんて。「いえ、結構ポンコツなんです、僕。手先は多少は器用だと思いますが、自分でも時々嫌になるくらい忘れ物をするし、道順とか本当に覚えられなくて。たとえば、ビルに入っている飲食店に行って、ビルのトイレに行くためにお店を出ると、もうお店へ戻れなかったりする(苦笑)。普通の人はトイレへ向かいながら道順を覚えるのに、僕は“トイレに行きたい”一心で歩いているので、道を覚えるところまで到達できないという(苦笑)。常に目の前のことに一生懸命になりすぎて、二手、三手、先のことが読めないんです」
――それは、なかなかすごいですね(笑)。「買い物も下手で、メモをしないでスーパーに行って、“あれ? 何買いに来たんだっけ?”と思うことも多いです。ある物を買うためにスーパーに行ったのに、違う物を買って帰って、家で“……っていうか、あれ買ってない!”って気づくこともしょっちゅうあって。だから最近は、ちゃんとメモをするようになりました。メモは重要!(笑)」
――オンとオフの落差が大きくて、興味深いです。「でも、特に切り替えを意識しているわけでもないんです。たとえば『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)で青林を演じていたときは、現場に行ってスーツに着替えて、青ちゃんの髪型になってカメラの前に立った瞬間には、もう青ちゃんになっていた感じでした」
『#リモラブ~』の青ちゃんも、かなり不器用なキャラクターだった。「でも、あれはまた違うタイプの不器さ。演じている僕も時々、あーもどかしい!と思っていました(笑)」