里山の写真家として知られる今森光彦さんのアトリエ「オーレリアンの庭」。 この“光の田園“で今森さんが新たに取り組むプロジェクトとは……。今森さんが環境農家を目指し奔走した日々を、ご自身のエッセイで綴っていただきます。
今森光彦 環境農家への道 第1回
オーレリアンの庭から里山へ
(文・切り絵/今森光彦)
庭に出たら、クロモジの冬芽が陽の光に照らされて、キラキラと輝いていた。まだ大気は冷たいというのに、植物たちは、もう春の出番を待っている。
アトリエの庭は、30年かけて自分が描く理想の里山になってきた。すると困ったもので、さらなる野心が膨らみはじめた。今度は、もっとスケール感のある、周辺の農地との境目がわからないくらい限りなく里山に近い庭に、挑戦してみたくなったのだ。
こちらの記事もおすすめです【特設WEBギャラリー】今森光彦さん、美しき切り絵の世界そんなある日、アトリエに電話がかかってきた。受話器を取ると、弾んだ西村さんの声がした。「農地が見つかりそうだからすぐ来てほしい」という。
大津市仰木地区に広がる棚田。私の里山物語の舞台。写真の中央を左右に走る帯状の浅い谷が、"光の田園"。中央やや右の部分に私が開墾する農地が見え、アトリエは、その右上の方角で森のなかに隠れている。右下方には、旧家の家並みが、右上方には、琵琶湖が、左上方には比良山系が霞んでいる。マンサクは、2月ころから咲き始める美しい花。黄色と紅色のコントラストとその姿がとても繊細だ。ヤマガラは、冬場にアトリエの周辺で普通に見られる。たいへん活発で、越冬している小昆虫を見つけてはついばむ。かわいい動作をしてくれるので観察が楽しい。切り絵のサイズ66×90センチ。