夢を実現するために「農家になれ」
私の構想を実現するには、農地を取得せねばならない。ただ、それには大きな壁がある。その壁とは、一般の者が農地を取得することが許されない、ということ。借地だと、いずれ持ち主に返さないといけないので、私が考えている農地再現は、なかなか難しい。
このつかみどころのない話に耳を傾けてくれたのが、アトリエの近くで専業農家を営む西村さんだった。西村さんは、迷わず私に「農家になれ」といった。農家という関門をくぐらないことには、この夢は実現しないという。
結局、私は意を決して、農業従事者としての申請をすることにした。手続きは、たくさん制約があってたいへんだったが、西村さんが農家としての基礎知識を教えてくれたおかげで、ようやく半年ほどかかって申請がおりた。(次週、今森光彦 環境農家への道 第2回に続く。)
アトリエの雑木林から眺める田園は、気持ちがいい。時間があるときは、いつもウロウロしている。落葉しているときは、野鳥の観察もできるので、双眼鏡も持って歩く。写真/今森真弓 今森光彦/Mitsuhiko Imamori
写真家。切り紙作家。
1954年滋賀県生まれ。第20回木村伊兵衛写真賞、第28回土門拳賞などを受賞。著書に『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社)、『今森光彦ペーパーカットアート おとなの切り紙』(山と溪谷社)ほか。
この連載は、『家庭画報』2017年2月号から掲載された「写真家・今森光彦の光の田園だより」をWEB用に再構成したものです。