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新たな「藤田美術館」へ、千 宗屋さん・麻子さんご夫婦と戸田貴士さんが竣工のお祝いに

2021.03.16

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藤田家ゆかりの名品が、ひと足先に里帰り


藤田美術館の新たな船出 新美術館で名品と遊ぶ
尾形光琳筆「寒山拾得」二幅対 江戸時代 もとは江戸の豪商・扇橋家から赤星家に伝わり、のちに藤田家の所蔵となったという。

戸田 美術館の所蔵作品が戻ってくるのはまだ先の話なので、今日は、藤田家伝来の品をひと足先に里帰りという趣向でお持ちしました。せっかくなので、床の間に軸を掛けましょう。


藤田美術館の新たな船出 新美術館で名品と遊ぶ
谷松屋戸田商店
戸田貴士さん

1981年、谷松屋一玄庵の12代目、戸田 博氏の長男として大阪に生まれる。3年間のフランス留学を経て、2003年に江戸時代から続く茶道具商谷松屋戸田商店に入社。

藤田 尾形光琳の「寒山拾得」ですね。この床の間は、随分悩みました。左官師の久住さんと話して、最終的に少しだけ青を感じるような黒にしていただきました。

戸田 新旧問わずどんなジャンルでも受けられるような自由な空間ですよね。

藤田 現代アートなども掛けてみたいですね。お茶碗は、こうして4碗を一緒に見るのは初めてです。

「“柾垣”はデザイン性とエネルギッシュな造形力が魅力です」── 戸田貴士さん


藤田美術館の新たな船出 新美術館で名品と遊ぶ
黒織部茶碗 銘 柾垣(まさがき) 桃山時代
白釉と黒釉をかけ分け、白地に杜若(かきつばた)と格子柄がのびのびとした筆致で描かれている。藤田家旧蔵。

 「柾垣(まさがき)」は、口縁に模様があるからちょっとこう、口をつけるときに躊躇させるところもあるんですが、飲むと意外に気になりませんね。

藤田美術館の新たな船出 新美術館で名品と遊ぶ
武者小路千家 家元後嗣
千 宗屋さん

1975年京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学大学院前期博士課程修了(中世日本絵画史)。2003年次期家元として後嗣号「宗屋」を襲名。同年大徳寺にて得度。隨縁斎の斎号を受ける。

藤田 小ぶりのお茶碗ですが、絵付けが伸びやかです。

戸田 華やかなデザイン性に加え、エネルギッシュな造形力もすごいです。

藤田美術館の新たな船出 新美術館で名品と遊ぶ
伝 宗味作 黒樂茶碗 銘 聖。宗味は樂家初代長次郎の妻の祖父田中宗慶の子で、2代吉左衛門・常慶の兄弟。生没年不詳。

 私がお持ちしたのは、宗味(そうみ)の作と伝わる、黒樂茶碗。表千家9代の了々斎と樂家10代の旦入が、初代長次郎の妻の祖父である田中宗慶の子、宗味の作と極めています。銘は「聖」といいます。

2017年に藤田美術館がこの建て替えのためにニューヨークのクリスティーズでオークションを行った際、たまたま時期が重なり、私もお茶会のためにニューヨークに滞在していました。そこで主茶碗として使ったのが、藤田家伝来のこのお茶碗です。大阪大空襲のためか箱が少し焼けていて、紐の跡が残っています。

戸田 焼けた箱は珍しいですね。激動の時代を乗り越えて今に伝わっているという感じがします。

藤田 若宗匠にこのお茶碗を見せていただいたときのことをよく覚えています。以前のお茶室「重窓」に初めてお邪魔した際に出していただいて、最初は何だかわからなかったのですが、恐る恐る、そう…み?って(笑)。

 そうでしたね。艶がありながらも、かせた感じの肌が独特です。

藤田 その時に藤田の伝来だと教えていただきました。

藤田美術館の新たな船出 新美術館で名品と遊ぶ
三島茶碗 三作三島 朝鮮王朝時代(16世紀)。見込みの黒い部分は、火ぶくれの部分に陶片をはめて漆で直したもの。外側は刷毛塗りで、下部は硬質な刷毛目の下の素地。その間に1本の掻き落としの線が引き回されている。

藤田 僕、この「三作三島」好きなんですよ。

戸田 “内は三島のごとく、外は粉引のごとし。高台脇より刷毛目あり”といって、三島特有の象嵌と粉引、刷毛目が揃ったものを三作といいます。さらに、この呼び継ぎこそが魅力ですよね。

 欠いてしまった陶片を使って継ぐ共継ぎではなく、別の茶碗の一部だったものを使って継ぐ呼び継ぎは、基本的に日本のものなので、朝鮮半島から日本に渡った後に誰かが継いだのでしょうね。まだ交易があまり盛んでなかった時代に渡ってきた「古三島」と呼ばれるこのお茶碗のようなものは稀少です。

藤田美術館の新たな船出 新美術館で名品と遊ぶ
砧青磁茶碗 南宋時代(12~13世紀)。

麻子 この青磁のお茶碗は、お茶が入るとさらに引き立ちますね。

藤田美術館の新たな船出 新美術館で名品と遊ぶ
千 麻子さん
1987年東京生まれ。学習院大学経済学部経営学科および文学部哲学科卒業。学芸員の資格を生かし博物館に勤務しながらもフランス・リヨンのポール・ボキューズ料理学校で料理を学び、三つ星レストランで研鑽を積む。2019年千 宗屋さんと結婚。

「ちょうど唐物、高麗物、樂、和物が揃いましたね」── 千 宗屋さん


 青磁はあまりお茶が映えないといわれるけれど、これは綺麗。ちょうど唐物の青磁、高麗物の三島、樂茶碗、和物の織部が揃いましたね。

戸田 藤田コレクションは、どれも綺麗ですよね。バランスのいい綺麗さびとでもいいましょうか。

藤田 傳三郎の好みだったのでしょうね。作品の状態についてもうちは割と綺麗好きで、茶渋なども洗って落としていたようです。藤田の家から出た品が新しい美術館に揃って里帰りしてくれた姿を見ることができて感激です。

藤田美術館の新たな船出 新美術館で名品と遊ぶ
里帰りした品々を前に、至福のひととき。手前左は樂家4代目一入(いちにゅう)作 黒樂四方形茶碗。中央は乾山絵替朝顔形向付5客(江戸時代)。千さんは黒織部茶碗 銘 柾垣、藤田さんは三作三島を手にしている。背景に見えているのは、茶室広間の水屋棚。ここでお茶会が開かれるのが楽しみだ。
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