カウンターキッチンで竣工を祝い、一献
カウンターには炉が切られている。2021年4月からの一部公開では、ここでお茶などのサービスを行う予定。「このキッチンを使って美術館としての可能性を広げたいですね」── 藤田 清さん
藤田 そろそろキッチンに移動しましょう。
千 日が陰ってくると、また雰囲気が変わって、いいですね。
戸田 断然、お酒が飲みたくなるシチュエーションです(笑)。
藤田 今日は、なんと麻子さんが腕をふるってくださっています。
麻子 日本酒に合わせて、和の味付けの洋の料理を考えました。
エディブルフラワーのペンタスと生ハム、なす、塩昆布のパイと、木の芽をあしらった玉ねぎのキャラメリゼと味噌のタルトは、舞茸のプードル(粉)を散らした黒田泰三作のプレートに。奥は、ベーコンとパセリのピュレ、花穂じそを添えたパルマンティエスープ。器は乾山絵替朝顔形向付。からすみと釜揚げしらす、レタスのパスタ。器は藤田家に伝わる藤と鳳凰の染付皿。藤田 おいしいですね! 改めて伺いますが、この新しい美術館で、どんな作品を見たり、どんなことをされたりしたいですか?
千 私はやはり、大きな作品をじっくり拝見したいですね。国宝「両部大経感得図」などの大きな仏画が展示空間にどう映えるのかが楽しみです。
戸田 若い人たちが気軽に立ち寄れて、一歩踏み込めば本物の世界に触れられる“入り口は広くて、奥が深い”美術館になると思います。お茶を体験できる新しいイベントもしてみたいですね。
千さんと戸田さんが持ち寄った、お気に入りの酒器。奥から、桃山時代の古備前徳利、志野盃、朝鮮時代の粉引耳盃。藤田 土間からは、広間の茶室が舞台のようにも見えるので、土間に椅子を並べて客席にして、お点前を見てもらうというようなことも考えられるかなと思います。
お茶会にはクローズドだからこその面白さがあると思うのですが、初心者のかたにとっては、いきなりお茶室に入るのは少々敷居が高い。その楽しさを客席から観覧してもらうというのは面白そうです。
千 そうですね。心得のあるお客さまに茶室に座ってもらい、お点前をはじめ、お茶会の一連の流れをお見せする。客席の皆さんには呈茶とお菓子を楽しんでもらい、お道具は後から間近に見ていただく、というやり方は、新しい大寄せの茶会のスタイルとしても考えられますね。
藤田 このカウンターキッチンでも、お料理教室を開いていただいたり、展覧会のテーマと食のコラボレーションをしたり、いろいろと企画していきたいですね。今後もお知恵を拝借して、さまざまな提案をしたいと思います。