銀座のシンボルだった柳を「きもの」に生かしたい
1993年、春日和の銀座、柳通り――「銀座もとじ」店主・泉二弘明(もとじ・こうめい)さんは、芽吹いたばかりの柳の新緑が朝陽に照らされ、風にそよぎキラキラと輝く様子に心打たれたと言います。
「この柳の美しく清らかな生命を、草木染のきものや帯として表現できないだろうか」。
剪定された銀座の柳を全国の染織作家や産地へ
銀座の柳をどうやって染めるか思案していたところ、毎年初夏に、中央区が銀座の柳を剪定して、その後は大量に処分しているという話を聞いた泉二さんは心を痛めます。
「何とかしてこの柳の命を活かすことはできないか」と思い早速、中央区から柳の枝葉を分けてもらい、全国各地の銀座もとじゆかりの染織作家や産地のもとへ届け、柳染による創作を依頼しました。
すると、同じ柳で染めたはずなのに、作り手によってまったく趣の異なる作品が次々と生み出され、柳の生命力に改めて感動したと言います。
以来、「銀座の柳染」は銀座もとじのものづくりにおける重要な柱の一つとして、27年以上も継続されることとなりました。
草木染は、染料となる植物を採取した季節や環境、成長具合、どんな媒染剤を合わせるかによってさまざまな色が染め出されます。
「作家それぞれの個性が出るのはもちろん、同じ作家でも年によってまったく異なる色を染め上げることもある。どんな作品に仕上がって銀座に帰ってくるかいつもワクワクしますね」と泉二さんは言います。
柳の枝葉に宿る生命が、剪定後にきものや帯の色に生まれ変わって、銀座の街に里帰りして、そして今度はお客さまの元へ旅立って――。泉二さんの発想によって、柳のリレーが繋がっていきます。
柳の生命の輝きは、子どもたちに受け継がれて
柳染のきものや帯のプロデュースのほかに、銀座もとじがもう一つ大切にしているのが、小学生への「銀座の柳染 課外授業」です。
銀座にある唯一の小学校、泰明(たいめい)小学校の5年生を対象に毎年行われる課外授業では、子どもたちは柳の剪定、煮出し、染色を体験。
柳染を通して、子どもたちはものづくりの楽しさや、生命の尊さを学びます。
今年で24年目を迎える課外授業。時折、成長した当時の子どもたちが店を訪れ、「銀座の柳染」の思い出話に花を咲かせることもあるそうです。
銀座の柳の生命は、確実に未来の担い手たちの心にも息づいています。
柳で染められた逸品がこの春、銀座に集結
2020年の夏も、全国各地の作り手のもとへ柳が送られました。染・織・繍の総勢30名の作家と産地によって創り出された約70点の作品が、今春、銀座へ里帰りして一堂に揃います。
同じ銀座の柳から染め出されながらも、唯一無二の多彩な表情を見せる作品群。
27年の歳月を経て、作り手の創造力と手技も円熟味を増し、今もなお進化し続ける、柳染の瑞々しく奥深き世界をぜひご堪能ください。
◆「銀座もとじ」その他の注目トピックス◆
1)インスタライブ配信 2021年3月7日(日)20時~ 「銀座もとじ」二代目・泉二啓太(もとじ・けいた)さんが銀座の柳の歴史「過去・現在・未来」について語ります。 公式インスタグラム:
@ginza_motoji 2)ぎゃらりートーク 2021年3月13日(土)10~11時 関東近郊の作家を迎えて今回の作品やものづくりについて語るトークイベントが開催されます(無観客ライブ配信となる可能性があります。詳細は、銀座もとじの公式サイトでご確認ください)。 URL:
https://www.motoji.co.jp/ 3)公式ホームページリニューアル 特別企画「ご登録キャンペーン」 「一本の糸から、一人ひとりと。」をコンセプトに作り手の「今」を発信し続けてきた銀座もとじの公式サイトがより美しく、より楽しく、より快適に生まれ変わりました。リニューアルを記念して、2つのキャンペーンを実施中。 1:メルマガ登録で15%OFFクーポンを全員にプレゼント 2:ウェブ会員登録で10万円商品券を抽選で10名様にプレゼント ※ウェブ会員登録の入力は5項目(氏名/アドレス/性別/誕生日/パスワード)のみ。2分程度で簡単にご登録いただけます。 キャンペーン期間:2021年2月20日(土)~3月31日(水) URL:
https://www.motoji.co.jp/ 撮影/本誌・伏見早織