withコロナ時代の健康術 第3回(02) withコロナの新しい生活様式で生きなければならないこの時代に、50代以降から衰えやすくなる器官や機能を取り上げ、健康を保つための方法を紹介します。今回は「骨盤底筋」をテーマに高尾美穂先生にお話を伺いました。
前回の記事はこちら>> “骨盤底筋がゆるむ”とデリケートゾーンの悩みが増える
〔解説してくださるかた〕
イーク表参道 副院長 高尾美穂(たかお・みほ)先生
●前回の記事
骨盤底筋が衰えることで困っている中高年女性が増加中>>女性の骨盤底筋は妊娠・出産で大きなダメージを受ける
骨盤底筋とはその名のとおり、骨盤の底にある筋肉でハンモックのような形をしています。薄い筋肉が重なり合っていることから骨盤底筋群とも呼ばれます。
「骨盤底筋には人類が二足歩行となって以来、重力によって落ちてくる内臓を下から支えるという大切な役割があります(下図参照)。また、重い荷物を持ち上げたりするときなどにかかる腹圧の衝撃を受け止めて内臓を保護しています。さらに前述したように尿道や肛門をゆるめたり締めたりして排泄をコントロールする働きもあるのです」と高尾先生は説明します。
一方、女性は妊娠・出産に対応できるよう男性よりも骨盤が広く、さらに骨盤の底、いわゆるデリケートゾーンには尿道、腟口、肛門と3つの穴が開いているため、骨盤底筋にかかる負担は男性よりも増す傾向があります。
生物学的にダメージを受けやすいことに加え、妊娠中は赤ちゃんの重みで持続的な負荷がかかり、分娩の際、赤ちゃんが腟を通って出てくるときにも骨盤底筋に大きなダメージを与えることがわかっています。
骨盤底筋の衰えが始まっている40歳前後の高齢出産の場合、そのリスクはさらに上昇します。
こうしたことから、妊娠中や出産後に尿漏れ経験のある女性は全体の8~9割に上るというデータがあります。別の調査では産後に尿漏れがあった女性のうち、7割は“いずれよくなるから”と放置していたことも明らかになっています。
「しかし、産後の尿漏れが長く続いた女性ほど高齢になって尿漏れのリスクが高くなることがわかっているのです」と高尾先生は指摘します。
さらに出産回数が多い人、難産だった人、吸引・鉗子分娩で出産した人も骨盤底筋がダメージを受けているので尿漏れのハイリスク者になります。
●骨盤底筋の働き
(1)骨盤内にある重要な臓器(子宮、直腸、膀胱など)を下から支える
(2)腹圧の衝撃を受け止めて内臓を保護する
(3)尿道、肛門、腟口をゆるめたり締めたりして排泄をコントロールするほか分娩を助ける