日常の生活習慣も骨盤底筋に悪影響を及ぼす
また、日常の生活習慣の中にも骨盤底筋にダメージを与える原因が潜んでいます。
「腹圧がかかる行為はリスク要因です。例えば便秘がちでトイレでいきむことが多い、アレルギーやぜんそくの持病があり咳やくしゃみをすることが多いなどが挙げられます。コルセットや着物の帯でウエストを締めつけることも腹圧が骨盤底筋に過度にかかるのでよくありません」。
さらに肥満も大敵です。内臓についた脂肪の重みを骨盤底筋が支え続けることによって筋肉がゆるんできます。
「長時間のデスクワークや運動不足など体を動かさない生活スタイルも骨盤底筋を弱らせる要因です」。
尿漏れや失便、骨盤臓器脱を引き起こし20年後のQOLが著しく低下する
骨盤底筋が衰えると尿漏れをはじめ、頻尿、便漏れ、骨盤臓器脱などデリケートゾーンのトラブルが増えてきます(下の表参照)。
「これらのトラブルはQOL(生活の質)を著しく低下させます。症状が重くなると外出するのが億劫になって運動量が低下し、それにより骨盤底筋などの筋肉がさらに弱り、症状が悪化する悪循環に陥るほか、人との交流も少なくなり気分が落ち込むなどの精神的な悪影響も与えてしまうのです」と高尾先生は指摘します。
骨盤底筋が衰えることによりデリケートゾーンに起こるトラブル
●尿漏れ・頻尿
自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまう。なかでも多いのが重い荷物を持ち上げたり、走ったりジャンプしたり、咳やくしゃみをしたりするなど、おなかに力が入ったときに尿が漏れる腹圧性尿失禁だ。また、頻繁に排尿したくなる頻尿や過活動膀胱などの排泄トラブルも起こりやすくなる。
●便漏れ
肛門の締まりがゆるんできて、排便の際に便切れが悪くなったり、トイレに間に合わずに漏らしてしまう便漏れ(失便)を起こしたりする。また、便を出したいときにうまく出せない機能性の便秘の原因になることもある。
●骨盤臓器脱
骨盤底筋が支えきれずに、子宮、膀胱、直腸などが下がってきて、腟口から飛び出してしまう状態。初期の自覚症状としては「陰部にピンポン玉のようなツルッとしたものが触れると感じる」ことが多い。
●デリケートゾーンのかゆみ
骨盤底筋のゆるみによって尿漏れしやすくなり、ショーツが濡れるなどデリケートゾーンが湿った状態になることでかゆみが起こりやすくなる。
●ボディラインの崩れ
骨盤底筋と連動して動く背中、おなか、お尻、太もも内側の筋肉にも悪影響を及ぼし姿勢や体形の崩れにつながることも。
デリケートゾーンのかゆみ対策
皮膚が湿った状態にならないよう通気性をよくすることが重要
デリケートゾーンのかゆみの多くは、皮膚が湿った状態に晒され続けることに起因します。
中高年女性の場合、その元になっているのが尿漏れです。かゆみを改善するには通気性をよくすることが重要で、尿漏れがあっても尿漏れパッドなどの使用はできるだけ控え、コットンのショーツを着用し、汚れたらショーツを取り替えることも選択肢の一つです。
また、閉経後は女性ホルモン(エストロゲン)の低減に伴い、腟内のpHを酸性に保ち、病原菌の繁殖を防いでくれるデーデルライン桿菌(かんきん)が減ってくるため、カンジダ腟炎を発症しやすくなります。
腟内にいるカンジダ菌がデリケートゾーンでも繁殖し、カンジダ外陰炎を引き起こすことがあり、これもかゆみの原因になります。
かゆみやかぶれを改善する市販薬でよくならない場合は、産婦人科や女性泌尿器科で相談するのがよいでしょう。