精神科医の禅僧が贈る「幸せ力を高めるマインドフルネス」第3回 HSPという言葉をご存じでしょうか。ある感覚が突出して鋭敏だったり周囲に過剰に気を遣うなど、「繊細すぎる人」を意味します。悩む人は多く、心の病との関連もありうる素質ですが、医療現場ではまだあまり注目されていません。「HSPへの理解を広めたい」との思いを込めて、川野泰周さんがその実態と対処法をお話しくださいます。
前回の記事はこちら＞＞ 5人に1人が当てはまるHSP（繊細すぎる人）
人より鋭敏な感覚は、“能力”でもあるのです
こんなあなたへ●音、匂い、光、味など特定の刺激にひどく敏感だ。
●大勢でいると、常に気を遣いぐったり疲れる。
●相手が不機嫌だと、「自分のせいかも？」と不安になる。
臨済宗建長寺派林香寺住職、精神科・心療内科医、RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長
川野泰周（かわの・たいしゅう）さんある感覚が突出して鋭敏で気を遣いすぎる素質を持つ人
写真／アフロHSP（Highly Sensitive Person）は、ここ1、2年で急速に注目され始めた概念です。「繊細すぎる人」などと訳され、持って生まれた素質として特定の感覚が突出して鋭い人を指します。
たとえば、かすかな煙草の匂いや遠くの工事現場の音が気になる、スーパーの照明がまぶしくて長時間いられない、決まった素材の肌着しか身につけられないなど表れ方は人それぞれで、いくつかを併せ持つ場合もあります。
五感以外にも、周囲に過剰に気を遣う、相手の気持ちを深読みしすぎるなど人間関係に人一倍敏感な傾向もよくみられます。
「私もそうかもしれない」と思い当たるかたは多いのではないでしょうか。一説では全人口の５分の１がHSPの特性を持つといわれ、ほとんどの人に多かれ少なかれみられる傾向だともいえます。
要は程度の問題で、「人より少し過敏かな？」くらいならよいのですが、過敏さによるストレスから頭痛、吐き気、湿疹など症状に出ると日常生活に支障を来すことになります。
うつ病や不安障害など心の病気との関連も考えられており、私の外来でも患者さんの半数以上にその傾向がみられます。自己肯定感（今の自分を認めてあげられる感覚）が低い傾向も指摘されていて、いつも緊張した状態でいるかたも少なくありません。
