アーティストにも多いHSP。鋭い感性は“強み”にもなる
HSP自体は病気ではなく、あくまでも素質。行きすぎると厄介ですが、人にはない強み、能力だと私はとらえています。
実際、人並み外れた感性や他者への共感力を生かしてアーティストや心理カウンセラーとして活躍したり、周りの人から「親身になって話を聞いてくれる」「一緒にいると安心する」と感謝されているかたが大勢いるのです。
私が患者さんに「HSPは天から与えられた能力でもあるのです」とお話しすると、「そのひと言で救われました」との反応をいただくことも少なくありません。
身近にHSPと思われる人がいたら、「細かいことを気にするな」ではなく、「よく気がつきますね」「気持ちが細やかなのですね」と感性を認める言葉がけをしていただけると、ご本人の自己肯定感は少しずつ育まれてゆくでしょう。
マインドフルネス的対処法で能力を生かしながら苦痛を軽減
しかし、HSPの知識が精神科医療の現場に行き渡っているとはいえず、その特性に注目した治療はほとんど行われていないのが現状です。
多くの場合、精神安定剤、気分調整薬、睡眠導入剤などが処方されますが、場合によっては感覚を鈍くさせる作用のために生来の個性や長所が隠れてしまう恐れがあります。副作用が強く出やすいのもHSPの特徴で「薬を飲んでも心が楽にならない」とさらに自分を責めてしまうこともあります。
そんな中、私がHSPに対する効果を実感しているのがマインドフルネス(今ここにある体験や感覚に注意を向け、「よい・悪い」の評価や価値判断を挟まず、あるがままに受容する心の状態)です。
瞑想の練習によってすべての感覚が平等に育まれていくため、相対的に、突出した感覚を苦痛に感じなくなる寛容さが生まれるのです。これは薬物療法とは対照的なアプローチで、本来の長所、能力を残しながら心身への負担を軽減する方法だといえます。
また、耳鳴りや慢性疼痛など難治性の症状に悩まされ続けてきたかたが「マインドフルネスを身につけてから、以前ほど苦痛に感じなくなった」とおっしゃる声も聞かれます。
HSPは、人の痛みがわかる優しさと思いやりに溢れた魅力的な素質だと私は感じています。これを“ギフテッド”ととらえ、自己肯定感を高めることのできる方法がマインドフルネスなのです。
今月のキーワード「ギフテッド(gifted)」贈り物を意味する英語のギフト(gift)が語源で、本来は同世代の平均と比べて並み外れた知能や才能を持つ子どもを指す。川野さんは、この言葉をより拡大解釈して、「天から授けられた才能」のすべてに対して「ギフテッド」という表現を用いている。