川野医師の診察室から
*実際の症例をもとに内容を変更して掲載しています。
【ケース・1】
みんなと一緒の昼食が苦痛。作り笑顔でぐったり疲れ、薬の副作用も強く出ていた→弁当を持参し、一人で昼食。「食べる瞑想」を実行し、思うように生きようと思えた
初診で訪れたとき、A子さん(45歳)はぼーっとして呂律(ろれつ)もうまく回らない状態でした。明らかに抗不安薬や睡眠薬の副作用です。症状を尋ねるとびくっとし、怯えたような顔で「すみません」と小声でひと言。私がいら立っていると勘違いされたようです。
しばらく状況がつかめずにいましたが、ふと思い当たり、HSPの本を読んでいただくと「全部当てはまります」とのこと。その頃から薬を減らし、思考がはっきりしてきたA子さんは「昼食を同僚と社員食堂で食べるのが苦痛。断るのも悪い気がして無理に笑うので疲れてしまう」と話してくれました。
私は、お弁当を持参して一人で食べることを提案し、一口を丁寧に味わう「食べる瞑想」(次ページ参照)をすすめました。並行してマインドフルネスの教室に通っていただくと、2年ほどで「私の生きたいように生きていいんだ」と思えるようになってきたのです。
今は薬を使わずに過ごせているA子さんが見つけた新たな趣味は「暗闇ボクシング」。光に敏感で人の目を気にしやすいA子さんにとって、暗い中、一人で行うエクササイズは爽快で、最高のストレス解消法になるようです。
【ケース・2】
母親の機嫌に振り回されて常にびくびく、気分も不安定。介護がつらくてしかたがない→瞑想のCDを毎日聴いて練習。母親の長所も短所も公平に見られるようになった
母親の顔色を窺いながら育ったB子さん(50歳)は、介護を担う年齢になっても母親の態度や言葉に振り回されていました。些細なことで突然怒り出す母親に常に緊張を強いられ「この状況がいつまで続くのか。つらくてしかたがない」と追い詰められた様子。
相手の言動に影響を受けやすいのもHSPの特徴です。「少し見方を変えてみましょう」とCDをお渡しして瞑想をすすめたところ、やがて母親の長所も短所も公平に見る目が育ち、感謝の気持ちが戻ってきました。
感性が強すぎて客観視が苦手だったB子さんも、二人の関係性をどう保てば平穏でいられるかを客観的に判断できるようになり、介護サービスを積極的に利用し始めたのです。その結果、B子さんの自由な時間も母親の笑顔も増え、穏やかな毎日を過ごされています。