『空洞のなかみ』
松重 豊 著/毎日新聞出版飄々とした風貌に重なる軽妙な文章が味わい深い小説とエッセイを収録した、俳優・松重 豊さんの初の著書。
京都の撮影所に来た役者の“私”と、同じバスに乗り合わせた老人のやりとりに始まり、その妄想がシュールに展開する12編の連作短編「愚者譫言(ぐしゃのうわごと)」。
演じた職業のパブリック・イメージと現実のギャップ、多くの役者にとって日常の悪夢にほかならない台詞を忘れる恐怖、若い頃はコンプレックスだった身長と髪の経年による思わぬ変化など、落語の枕のような摑みのうまさで読ませるエッセイ「演者戯言(えんじゃのざれごと)」。
役者の心象風景が浮かぶ一冊。
「#今月の本」の記事をもっと見る>> 『家庭画報』2021年4月号掲載。
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