桜の名所として知られる京都・嵐山。後嵯峨上皇が吉野から数百の桜を移植したといわれ、現在では約1500本が人々を楽しませている。(写真・田中重樹/アフロ)花見んと群れつつ人の来るのみぞ あたら桜の咎にはありける
選・文=大倉源次郎(大倉流小鼓方十六世宗家)
桜の奇特は人を集めること。
桜が咲くと人が集まり一年の農作業の段取りを決める大切な時期であったと知った。
今では花見に浮かれる人の様を思うが本来の意味は違っていたようだ。
西行桜の能では、西行法師の庵の桜が満開と聞いて花見客が大勢訪れる。
お気に入りの桜を一人楽しもうとしていた西行は愚痴を歌う。すると桜の精が現れ、暫し歌の世界を遊ぶ。
自然との対話をして人の在り方を考えさせる能だ。
『家庭画報』2021年4月号掲載。
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