八寸は華やかに。季節の栗は渋皮つきで揚げ、蟹の砧巻きや鮎の風干し、小芋の塩昆布射込み、いくち茸と菊、菊菜のお浸し、さつまいものお団子など、それぞれに手のかかった品が10品。
地下のこぢんまりしたお店のカウンターにはいつもおいしいものに目がない人たちが集います。小さい床の間のようなスペースには銀座の目利き骨董商が月替わりで目を引く掛物をあしらい、雰囲気をいっそう高めています。
7席で満席の空間は貸し切りに最適。美味談議に花が咲くはず。
ご主人・山城和彦さんは京都での経験のせいか、味も素材の選び方もどことなく京を思わせる組み立てで、しっかりと素材を味わえる薄味を嬉しく感じます。渋い古瓦には八寸が華やかに盛り込まれ、一つ一つの繊細な仕上げに心をつかまれます。一転してお椀は極めてシンプル。
「あまり余計なことはしたくないんです」というご主人ならではの潔さです。だしのうまみと琵琶湖の大鰻のこくが溶け合い、しみじみと「おいしい」という声が上がります。
コンパクトな空間は友人同士で貸し切りにすれば、心おきなく美味談議が交わせる場に。予約次第ではお昼も営業していただけるのも嬉しいかぎりです。
お椀はすっきりと直球勝負。焼きなす豆腐に鰻の白焼きを添えて。
焼き物はひと塩した甘鯛と松茸を炭火で焼いて。人間国宝・金重陶陽氏の器がより秋らしさを醸し出す。
Information
栞庵 やましろ(しおりあん やましろ)
東京都中央区銀座5‒9‒19 MCビル地下1階
- 料金の目安:2万円~。 写真は2万円~のコースより。 要予約 全7席 5名以上で貸し切り可。
表示価格はすべて税抜きです。
「家庭画報」2016年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。