今回のゲストは臨済宗建長寺派林香寺住職で、精神科医・心療内科医の川野泰周さん。松岡さんを「マインドフルネスの体現者」として、ずっと注目していたという川野さんと、選手時代から瞑想を実践している松岡さんは、会ってすぐに意気投合。対談の最後、お二人ともが「しゃべりすぎました?」といって笑ったほど、話が盛り上がりました。 *『家庭画報』2021年4月号掲載。この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。本取材は感染予防対策を徹底して実施しました。
柔らかな日差しが降り注ぐ庭園で、並んで瞑想する松岡修造さんと川野泰周さん。「いちばん大事なのは続けること」と川野さんが説く瞑想から、マインドフルネスが生まれます。松岡さん・スーツ、シャツ、靴/紳士服コナカ第31回
臨済宗建長寺派林香寺住職、精神科医・心療内科医
川野泰周さん
川野 泰周さん TAISHU KAWANO1980年神奈川県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、精神科医療に6年間従事。その後、建長寺専門道場での3年半にわたる禅修行を経て、2014年末より実家である横浜の臨済宗建長寺派林香寺の第19代住職となる。寺務と精神科診療のかたわら、講演活動や執筆活動などを通じてマインドフルネスの普及にも尽力している。RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。家庭画報本誌にて「幸せ力を高めるマインドフルネス」を好評連載中。松岡さんは生き方がマインドフル!
「『ありがとう、ありがとう』。心の中で繰り返すと、いつでも前向きになれます」── 松岡さん
川野 今日は一つ、ぜひお伺いしたいことがありまして。実は私、講演会でよく、「松岡修造さんは生き方そのものがマインドフル。瞑想をされているかもしれません」とお話しさせていただいているのですが、実際はいかがでしょう?
松岡 瞑想は20代の頃、テニスを追求するなかで始めました。今はジュニア選手の合宿でも取り入れていて、大きな効果を感じています。
川野 やはりそうでしたか! 答え合わせができて嬉しいです。修造さんの日めくりカレンダーにある「後ろを見るな! 前も見るな! 今を見ろ!」はまさにマインドフルネスの定義「今、ここにある体験や感覚に注意を向け、それをあるがまま受容する心の状態」そのものですね。
松岡 そうかもしれません。「今を生きる」ことは大事にしています。そのためにいろいろなかたから学んだことを自分なりにアレンジして実践しているのですが、その一つが「ありがとう瞑想」です。イライラが募ったときなどに、心の中で「ありがとう」と唱えるのですが、繰り返しているうちに不思議と前向きなことしか考えられなくなります。
川野 それは心理学で証明されている方法ですね。
松岡 証明されているんですか?
川野 心のフレームを替える「リフレーミング」という心理療法があって、こじつけでもいいから、ポジティブな表現をするんです。たとえば、紅葉狩りに行ったのに葉がほとんど散ってしまっていたら、「少しだけ葉が残っているのも健気な風情でいいな」と口にしてみる。すると、目の前の風景が違って見えてきます。松岡さんはそういうことを無意識に実践されているのですね。