「先生はずっと笑顔ですね」と感心しきりの松岡さんに、「自然にこういう表情になるんです」とにこやかに答える川野さん。大切な人の幸せから願う日本流「慈悲の瞑想」
「『私が幸せでありますように』。自分に優しい言葉をかけるのが慈悲の瞑想です」── 川野さん
松岡 瞑想にもいろいろあるようですが、人によって向き不向きはありますか。
川野 はい。たとえば、失敗体験を繰り返しているかたは、なかなかポジティブな言葉が心に入っていきません。そんなかたは、自分に優しい言葉をかける「慈悲の瞑想」が心の助けとなることがあります。
松岡 自分に優しい言葉とは、具体的にどのようなものですか。
川野 「私が幸せでありますように。健康でありますように。安全でありますように。心安らかに暮らせますように」。この4つのフレーズです。
松岡 私が幸せでありますように。
川野 覚えなくてもいいですし、どれか一つでもいいんです。海外では自分の幸せを願ってから、大切な人の幸せを願うのですが、私はそれを日本流にアレンジして、逆の順番でお伝えしています。なぜなら、日本の多くのかたは「私なんかが最初に幸せになるのはおこがましい」と躊躇されるからです。「大切な人の幸せを願ってから、ご自分の幸せも願いましょう」と変えたところ、やっていただけるようになりました。
松岡 日本人らしいお話ですね。
マインドフルネス普及活動の最終目的は世界平和
松岡 先生は講演活動やご著書などを通じて熱心にマインドフルネスを広めていらっしゃいますが、一番の目的は何ですか。
川野 最終的には「世界平和」です。
松岡 世界平和ですか!
川野 そういうと、大それたことのように聞こえますので、日頃はあまり口にしませんが、心の底では常に思っています。人は自分を徹底的に見つめていくと「誰もが同じ人間存在なんだ」というところに行き着く。みながその境地に至れば、思いやりのある社会がつくれると思うのです。
松岡 そうなったら最高ですね。
川野 瞑想も、きっかけはストレスの発散や睡眠の質の向上などでいいんです。でも、本質は、瞑想によって心が穏やかになり、互いを支え合う世界平和が実現することなんですね。最初からこの話をすると、敬遠されてしまいますけど(笑)。
松岡 世界平和といえば、オリンピック・パラリンピックは平和の祭典です。マインドフルネスを広めるいい機会ではないでしょうか。
川野 はい。東京2020大会が開催されれば、日本人の心を世界に伝えることができます。そのとき、日本のかたがたがマインドフルネスにより自分自身を受容し、ほかの人のことも受容する心を持てるようになっていれば、画面越しであったとしても、必ず伝わります。
松岡 そうですね。僕は昔からオリンピックは、スポーツの祭典であると同時に、開催地の文化を伝えるものだと考えているんです。特に今大会はかつてないほど世界中から注目されています。実現されるときは、開催国である日本がおもてなしの文化で世界各国のみなさんの心を一つにするときだと思うのです。
川野 本当にそのとおりですね!