【連載】日本の医療をリードする名病院と病院長 幕末期に西洋医学塾から出発した順天堂医院は、人のために尽くす“仁”の精神を常に重んじてきました。この基本姿勢は高度先進医療を提供する特定機能病院の役割を担うようになった現在も変わりません。高度でも人の温もりを感じられる医療の提供を目指して前進する順天堂医院の最新の動向をご紹介します。
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“患者ファースト”を支柱に最新・最高の医療を実践
順天堂大学医学部附属順天堂医院
院長 髙橋和久 先生
順天堂大学医学部附属順天堂医院 院長
大学院医学研究科 呼吸器内科学 教授
髙橋和久(たかはし・かずひさ)
1960年、東京都生まれ。85年、順天堂大学医学部卒業。94年~ 97年、米国ハーバード大学医学部附属マサチューセッツ総合病院に留学。順天堂大学医学部呼吸器内科学講座講師、助教授を経て2005年より教授。14年~ 19年3月、順天堂医院副院長、19年4月より院長。20年、北京大学医学部客員教授。専門は肺がんで病態研究に深く携わる。未来の創薬を目指し、臨床研究中核病院としての体制づくりにも尽力。臨床研究中核病院として新しい薬や治療法の開発を目指す
順天堂大学医学部附属順天堂医院(以下、順天堂医院)の歴史は1838年に佐藤泰然が西洋医学塾を開いたことに始まります。
「順天堂医院は“病院”という呼称を使いません。なぜなら病院には“病人を収容するところ”という意味があるからです。私たちは創立以来“仁”の精神を重んじ、人々のために尽くしてきました。これは21世紀の現在も変わることはありません。1000床規模の病院になっても“治療するところ”という意味を持つ“医院”の呼称を守り続けるのは当院の決意の表れなのです」と院長の髙橋和久先生は語ります。
〔21世紀の今も「仁」の精神を受け継ぐ〕臨床研究・治験センターがある新研究棟のエントランスには1906年竣工の順天堂医院を再現し、現代にも「仁」の精神を刻む。写真提供/順天堂医院高度先進医療を提供する特定機能病院の役割を担う今、医療安全に対する文化と連携体制を構築し、どの領域においても最高水準の治療技術と医療サービスを提供すべく尽力しています。
最も力を入れているのは「がん医療」で、症例数の多さは全国の大学病院の中でも常に上位です。“外科の順天堂”といわれるだけあってがんの手術には定評がありますが、内科治療でも新たな取り組みが始まっています。
「その一つが創薬への挑戦です。当院は2020年、臨床研究中核病院に承認され、さまざまな臨床研究や治験を実施しています。私の専門である肺がんでは約30件の治験が進行中です」