withコロナ時代の健康術 第4回(02) withコロナの新しい生活様式で生きなければならないこの時代に、50代以降から衰えやすくなる器官や機能を取り上げ、健康を保つための方法を紹介します。今回は「胃の健康」をテーマに河合 隆先生にお話を伺いました。
前回の記事はこちら>> 胃の機能やピロリ菌を知ることが胃の健康の第一歩
〔解説してくださるかた〕
東京医科大学 主任教授 同病院内視鏡センター 部長 健診予防医学センター 部長
河合 隆(かわい・たかし)先生
●前回の記事
胃は病気がなければ年をとっても衰えにくい>>胃は飲食物を殺菌しながら、胃液と混ぜ合わせる
胃は、胸部と腹部を隔てる横隔膜の下の左の大部分を占める大きな臓器です(上図)。
外側は筋肉で、中にはひだがあり、この筋肉とひだが胃の大きさを調節します。胃はいわば筋肉でできた袋で、飲食物をためる倉庫です。内側は粘膜に覆われ、その表面を粘液が守っています。粘膜細胞は傷つくと入れ替わり、粘膜を素早く修復します。
咀嚼された飲食物が食道から入ってくると粘膜からの胃液の分泌が活発になります。胃液はpH1〜2と強い酸である胃酸、たんぱく質分解酵素などが粘液と混じったもので、1日1.5〜2.5Lほど分泌されます。
胃には消化の初期段階を担うだけでなく、強い酸で外から来た細菌やウイルスなどを殺す役割があります。
胃液と飲食物が混じり始めると胃の筋肉が順序よく収縮し、また振り子のように揺れ動いて攪拌します(下の図で説明)。この収縮は「上腕式血圧計のカフ(腕に巻くバンド)がきつく締まるときくらいの強さです」。そして、胃液に飲食物が溶けて粥状になったところで幽門が開き、十二指腸に送り出します。十二指腸では胆汁、膵液などの消化酵素が分泌され、さらに消化が進みます。
胃は食べ物をためる大きな袋
【食道】
食道は直径2センチ、長さ25センチほど。食道のぜん動運動と重力によって、飲み込んだ液体は数秒で、固形物は数十秒から1分程度で胃に到達する。食道は喉の背中側にあり、横隔膜を突き抜けて、体の左奥で胃の上部とつながっている。食道の下部は特に筋肉が発達していて、胃から飲食物や胃液が逆流しないように締めている。
【胃】
胃は空腹時は50ml程度と小さくしぼんでいて、飲食物が入ると膨らんで1~2Lになる。飲食物は、胃酸やたんぱく質分解酵素を含む胃液とともに攪拌され、数時間から10時間程度で粥状になって、十二指腸に送られる。
【十二指腸】
十二指腸は約30センチで、6メートルほどある小腸の一部。十二指腸には胆嚢にためられた胆汁が胆管から分泌され、膵臓からは膵液が入ってくる。胃酸を中和しながら、すべての栄養素を分解する本格的な消化が行われる。
胃に飲食物が滞留するのは2〜10時間程度で、「飲み物は通過が速く、脂っこい食事は長くかかります」。
胃はグレリンというホルモンも分泌しています。グレリンは脳に働いて食欲を増進させ、成長ホルモンの分泌を促進します。
また、胃に食べ物が入ると胃・大腸反射が起こり、大腸が収縮して排便を促す機能も備わっています。
胃の筋肉が収縮して食べ物と胃液を混ぜ合わせる
(1)胃は中に飲食物がないときにはしぼんで小さくなっている。
(2)咀嚼で小さくなった食べ物が食道に入り、胃に近づくと噴門が開き、胃が膨らんで大きくなる。胃液の分泌も活発になる。
(3)胃壁の筋肉が幽門に向かって順番に次々と収縮してぜん動運動を起こし(毎分3~4回ほど)、飲食物と胃液をよく混ぜ合わせる。幽門が閉じているときは逆に向かってぜん動していく。
(4)消化が進み、飲食物が粥状になる頃には胃の中の圧力が高まっている。幽門が開き、圧力の差を利用して胃の内容物を十二指腸に送り出す。