この竹林、なんと45年間放置されていたらしい。
竹の種類は、マダケ。もともと日本に自生していたとされる種類で、スマートに高く伸びるのが特徴。マダケは、農家の資材として有用で、鯉のぼりを飾るときの竿や稲を干す〝はさかけ〟としても使われた。昔、棚田が連なっていたころ、持ち主が、マダケを一角に植林したらしい。
しかし、農作業が健全におこなわれているときはいいけれど、人が来なくなると、地下茎で増える竹にとっては、天下無敵の環境になってしまう。
西村さんは、「はしから切っていこか」とさりげなく言った。 このとき、西村さんも私も、これから始まる過酷な格闘をまったく想像していなかった。(次週、「今森光彦 環境農家への道 第4回」に続く))
春の花ならなんでも訪れる、甘いもの好きのベニシジミ。親指の爪ほどのかわいい蝶で、里山の住人だといっていい。切り絵は、ベニシジミがハルリンドウにやってきたところ。ハルリンドウは、私が大好きな花のひとつ。湿った田んぼの土手に生えていることが多かったが、最近は、めっきり少なくなってしまった。画面左上にあるのは、胴乱。採集した植物などを破損させずに持ち歩くための便利な肩掛け鞄。この胴乱は、私がよく通ったパリにある博物商の老舗、デロールのオリジナル。切り絵のサイズ 60×45㌢。 今森光彦/Mitsuhiko Imamori
写真家。切り紙作家。
1954年滋賀県生まれ。第20回木村伊兵衛写真賞、第28回土門拳賞などを受賞。著書に『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社)、『今森光彦ペーパーカットアート おとなの切り紙』(山と溪谷社)ほか。