注目すべき4人のデザイナー
首藤 治 Osamu Shudo
自然モチーフ、淡い色調、そして緻密な細工。作り手の人柄が滲み出るような優しいデザインに魅了されます。上から・ウンベラータのリング(YG×ダイヤモンド×イエローダイヤモンド)421万2000円 麦の穂のリング(YG×ダイヤモンド)140万円 花かごのブローチ(YG×パール×ダイヤモンド×エナメル)442万円/すべてSHUDO(ジュエリークラフトシュドウ)繊細、デリケートの一語に尽きます。金やプラチナの細い線、細い爪、細い枠、すべてが不要な金属をそぎ落とし、軽く、華奢に作られています。今の日本でここまで繊細な金属加工ができるのは彼だけでしょう。2015年には黄綬褒章を受章しました。名古屋のアトリエで、素材選びからデザイン、作りまですべて自身が手がけるため、あまりにも寡作ですが、その見事さは一見に値します。
村松 司 Tsukasa Muramatsu
左・ラフレシアの斑点模様を、プリカジュールとパールで実現。ネックレス兼ブローチ(YG×Pt×プリカジュールエナメル×ダイヤモンド×ベビーパール)480万円 右・透明感のあるブルーのグラデーションで大輪のバラを表現。裏側にはパールのイモムシが。ブローチ兼ペンダント(YG×プリカジュールエナメル×ダイヤモンド×ベビーパール)585万円/ともにTSUKASA MURAMATSU(工房ムラマツ)七宝、エナメルという技術は、素材が色ガラスであることからか日本では軽視され、技術的にも欧州などに比べると劣っていました。しかし最近では、色彩の多様さと宝石にはない形の自在さが注目され、日本でも優れた作家が出ています。山梨にアトリエを構える村松さんは、エナメルを専門とする作家。プリカジュール・エナメルの動植物モチーフのジュエリーは、他にはないユニークで大胆なものとして注目を集めています。
吹田眞輝江 Makie Suita
真珠を用いた端正なデザインが秀逸。上左・新芽をイメージしたリング(YG×ケシパール×ダイヤモンド)40万円 上右・ブローチ兼帯留め(YG×ベビーパール×ダイヤモンド)180万円 下・雫の落ちる瞬間の美しさを表現したブローチ(WG×ダイヤモンド×南洋真珠×ケシパール)120万円/すべてS.MAKIE(山清堂)江戸時代、京都から甲府に水晶の研磨を伝えた吹田家の末裔が作るジュエリーは、大胆不敵なデザインの中に、京都らしい和の薫りが漂います。まだ若い女性ですが、素材にこだわらず、フォルムを重視したデザインの大胆さは、他に類のないもの。それでいて、細部にはこれは日本人の感覚だなと思わせるこだわりを感じさせる、不思議なジュエリーです。
柏倉主和 Kazutoshi Kashiwagura
1メートルを超える長さの、グレーパールのネックレス。金線で一つ一つ緻密に編まれ、驚くほどのしなやかさを誇ります。首もとにさらりと巻いたり、ベルトにしたり。自由な使い方を楽しんで。ネックレス(WG×淡水パール)340万円/キャスミン山形に本拠を置き、極めてユニークなジュエリーを作っているのが柏倉さんです。彼が作るのは、2~5ミリ程度の小さな真珠、あるいは同じようなサイズのサンゴなどを、極細の金線で編み上げてゆくというもの。一番の特徴はすべてのパーツが自在に動くことで、その軽快さは他のジュエリーでは味わえないものです。繊細さ、軽さ、シックな色彩、どれをとっても日本人好みで、伸びゆく可能性を感じます。
〔特集〕夢や希望を輝きに託して 美は心を潤す(全4回)
表示価格はすべて税抜きです。
監修/山口 遼(宝石史研究家) 撮影/栗本 光 スタイリング/阿部美恵
『家庭画報』2021年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。