• TOP
  • アート
  • 数寄者と宗匠の一客一亭 「茶事の床」を拝見する

アート

数寄者と宗匠の一客一亭 「茶事の床」を拝見する

2021.04.02

  • facebook
  • line
  • twitter

「茶の仙郷」の床


祝允明(しゅくいんめい) 書 楊維楨 煮茶夢記(しょちゃぼうき)


茶室の床に掛かるのは、「煮茶夢記」です。楊維楨(1296~1370年)の文学作品の一部を、200年後に、明代を代表する書家の祝允明(1460~1527年)が闊達な書に認(したた)めました。

『煮茶夢記』は、中国の三大茶書の一つとされますが、茶記ではなく茶を題材にした幻想文学。お茶による陶酔の仙郷を描いています。


横に長く、本来は煎茶を楽しむ際、書斎に掛けるものですが、今回は小間の床に掛けて、濃茶の後に続き煎茶を楽しみました。

数寄者と宗匠の一客一亭 「茶事の床」を拝見する

祝允明の書「煮茶夢記」を掛けて、煎茶の花を入れると、床の間は茶の湯とは異なる雰囲気に変わった。小間の畳には梅の実を置いている。

煎茶になると場面は一転。床には、煎茶花(薔薇と梅の木)が入れられ、室内には『煮茶夢記』に登場する梅花にちなんで、青梅の実も点々と飾られました。小間全体があたかも舞台のようです。

茶事が終わった退出口には掛軸を掛けて客を送り出します。

追出と呼ばれますが、梅原龍三郎の薔薇の画に、「今日風日好」という李白の詩の冒頭の一句。いい日だったね、と客にいとまを告げます。

数寄者と宗匠の一客一亭 「茶事の床」を拝見する

追出に掛けた梅原龍三郎の画「今日風日好」。

数寄者と宗匠の一客一亭 「茶事の床」を拝見する

寄付には、富岡鉄斎が78 歳のときに描いた絵。霧が立ち込めた山の頂きで仙人はどこにいるかと問いかける賛。

潮田洋一郎(うしおだ よういちろう)
1953年東京生まれ。愛好する漢籍や中国書画、伝世の名物道具を組み合わせ、独創的な茶の世界を創造する数寄者。

佃 一輝(つくだ いっき)
1952年大阪生まれ。江戸後期以来、文人趣味の煎茶を伝える一茶庵宗家の当代宗匠。文人茶の伝承と再生を提唱。

『数寄の真髄 茶にあそぶ』 潮田洋一郎 著 数寄の真髄 茶にあそぶ 数寄者・潮田洋一郎氏が一茶庵・佃 一輝宗匠と作り上げる、約束事にとらわれない茶事の数々。重要文化財3点、重要美術品4点を含む愛好家垂涎の名品道具を自在に使いこなす、至福の時間が一冊に。 珠玉の茶事9席を収録 数寄の真髄 茶にあそぶ 愛好家垂涎の名品茶道具を使いこなした一客一亭を収録しました。通常の茶の湯の規格には合わない空間や道具も楽しむため、ときには煎茶が組み入れられているのも本書の特徴です。 迫力の写真と臨場感 数寄の真髄 茶にあそぶ 写真はすべて進行する茶事の現場で新規に撮り下ろしたもの。床に掛かる書画や花、濃茶が練られる茶碗、道具を賞玩する主客、道具の細部など、茶席の臨場感が追体験できます。 一客一亭の数寄談議 数寄の真髄 茶にあそぶ 空間と道具、そして亭主と客の交わりがあって、茶という場は成立します。茶席での主客の話は座談形式でまとめました。思わぬ方向に展開する二人の対話も本書の魅力といえましょう。 B5 変型判 上製 240ページ 定価:6,600円(本体6,000円+税10%) ISBN978-4418219001

撮影/本誌・坂本正行 取材・文/片柳草生
『家庭画報』2021年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
  • facebook
  • line
  • twitter

12星座占い今日のわたし

全体ランキング&仕事、お金、愛情…
今日のあなたの運勢は?

2024 / 11 / 21

他の星座を見る

Keyword

注目キーワード

Pick up

注目記事
12星座占い今日のわたし

全体ランキング&仕事、お金、愛情…
今日のあなたの運勢は?

2024 / 11 / 21

他の星座を見る