——不安が楽しみに変わったのは、何かきっかけがあったんですか?「ヴォルフガングを演じることが、単純に楽しいんです。魅力的な役ですし、ナンバーも素晴らしいですし。描かれている彼のドラマも素敵で。演じてみて改めて、ミュージカルをやっている人なら誰しもが憧れる役なんじゃないかなと思いました」
——前回の『モーツァルト!』前、自分の武器を探さないととおっしゃっていました。公演が終わるまでに見つかりました?「見つかっていないです。武器って……。ハードルを上げてますよね。誰にも負けないものなわけだから。そんなハードルを上げられるものは、まだないです。たぶん80歳くらいになって一つ見つかるかなって感じじゃないかと思っています。今は、練習期間です。80歳に向けての」
——武器獲得に向けて、いろいろなものを身につけて積み重ねているところなんですね。「はい。3年前の僕は浅はかでした(笑)。そんな簡単に武器が見つかると思っているなんて。ずっと戦いなんです。まさに、この作品のとおり。ヴォルフガングはすごく特殊な才能を持っているからこそ、というところもあるとは思うんですけど、実は誰しも共感できる当たり前のことを描いているんです」
——じゃあ、演じていて共感できる、自分に置き換えて考えられる役?「共感できますね。選択の連続ですし、何を幸せと思うかによっても変わっていきますし。多くの人が共感できる悩みというか、出来事がこの作品にはつまっている気がします」
——すでに稽古に入っていますが、感じている手応えなどはありますか?「心の余裕はありますけど、やっぱりすごくハードな作品だなと思います。一度やっているから、ちょっと余裕ぶって入ろうかななんて思っていたんです。稽古に入る前に、いろいろな媒体でインタビューしていただいたんですけど、余裕でいきますみたいなふうに言っちゃってて。それを後悔しています(笑)。この作品はそれじゃダメだな、泥臭くいくしかないって瞬時に切り替えました。今回は、確認ごとでも段取りでも、常にマックス、常にフルでいきたいなと」
過去5度の日本公演でヴォルフガングを演じたのは、3人のみ。4人目が古川さんで、「今まで3人しか演じていない貴重な役」と語る。