――稽古の手応えはいかがですか?「新しいアプローチのミュージカルになっていると思います。セリフが自然と歌になり、踊りとなり……という流れになっているので、ミュージカルが苦手な方も観やすいのではないかと。短期間で作品を仕上げる現場で鍛えられてきた僕にとっては、長い稽古期間も新鮮で、いろいろな芝居の仕方を楽しみながら試しています。そんな中で改めて思い出すのは、音楽劇『マリウス』のときに(脚本・演出の)山田洋次監督から教わった、“大事なのは、その人をどう演じるかではなく、その人はなぜそうするのか問いかけ続けること”という言葉。その『マリウス』をやらせてもらった日生劇場で、今回また新しい表現ができることも、すごくありがたいです」
――劇中で今井さんがフラメンコを踊るシーンはあるのですか?「少しですが、あります。しっかり踊り込むわけではなく、高まっていく感情の延長線上で表現するイメージです。もともとフラメンコは、体の芯から湧き起こってくる怒りや喜び、悲しみが踊りになったもの。ゴヤの野心や、ほとばしる感情を表現したいです。ほかに、ジャズダンスの要素が入った踊りもあるんですよ。僕はジャズからダンスを始めた人間なので、ジャズを踊る楽しさも感じています」
――本作品でミュージカルの作曲と音楽監督に初挑戦されている清塚信也さんの音楽は、どんな感じなのでしょう?「フラメンコのサパテアード(足拍子)やパルマ(手拍子)を取り入れたスペインに寄り添った音楽もあれば、まったく違うものもあって、まさに型にはまらないゴヤのようです。清塚さんの音楽だからこその世界観を感じます。まるで組曲のように、ひとつの曲の中にもいろいろな展開があって、その展開の中にさまざまな景色や心情が浮かび上がってくるんです。G2さんが、セリフが自然と歌詞になっていくような書き方をされているので、そういう意味でもとても芸術的なつくりになっていると思います」
本場のフラメンコを観るために、2007年に1人でスペインを訪れて以来、何度も足を運ぶようになり、2012年にスペイン文化特使に就任した。