――今井さんにとって、スペインはどういう場所ですか?「日本の次に大好きな場所です。舞台でフラメンコを踊ることになったのをきっかけに、フラメンコという新しい表現を身につけようと思って行き始めた国ですが、今は文化も食べ物も土地柄も含めて好きですね。地域によっても、それぞれ違った魅力があります。本来なら、海外を舞台にした作品をやるときは必ず、事前にその土地へ行って、いろいろなことを感じたり、考えるようにしていたんですが、今回ばかりは(コロナ禍で)それができなくて。ただ僕には、自分の足と時間を使って、何度もスペインに通ってきた経験があります。僕が感じたスペインの画家ゴヤというものを、表現していきたいです」
――それにしても、ゴヤはかなりエネルギーが要りそうな役ですね。上昇志向が非常に強いですし。「そうですね。1幕は、その上昇志向を音楽に乗せて明るくテンポよく描きながら、まさにスペイン語のように早口でいろいろなテンションを行ったり来たりするので、常にエンジンをかけまくっているような状態。ガス欠にならないようにしないと(笑)。でも、そうなってもいいくらいのエネルギーで臨みたいです。強い出世欲をもって地位を手に入れた後との落差が、この舞台の醍醐味だと思うので。ゴヤは何を見て、自分にどう向き合っていくのか。まだ稽古の途中なので、晩年に向かってゴヤの人間らしさをどう描いていくのか、僕も楽しみにしています」
スペインへ行くと、現地の美術館にも足を運ぶという今井さん。「僕はダリが好きで、自宅のトイレはダリの作品だらけ。通称“ダリ便”と呼ばれています(笑)」