2020年10月に東京2020大会のスポーツディレクターに就任した小谷実可子さんは日本のアーティスティックスイミング(旧シンクロナイズドスイミング)界のパイオニア。松岡さんの“小谷さん礼賛”で幕を開けた対談では、明るい笑顔と飾らない言葉で、大役への覚悟やオリンピックへの思いを明かしてくれました。 *『家庭画報』2021年5月号掲載。この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。本取材は感染予防対策を徹底して実施しました。
今もストイックなトレーニングを続けている小谷さん、「苦しいトレーニングはしません。甘造です」と謙遜する松岡さん。ともにアスリート体型を維持していて、あっぱれです! 松岡さん・スーツ、シャツ、ベルト、靴/紳士服コナカ第32回
東京2020スポーツディレクター、アジア・オリンピック評議会アスリート委員長
小谷実可子さん
小谷 実可子さん MIKAKO KOTANI1966年東京都生まれ。88年のソウルオリンピックで旗手を務め、シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング)のソロ、デュエットで銅メダルを獲得。92年のバルセロナ大会も代表となったが、出場は果たせず、大会後に引退。オリンピック、教育関連の要職を歴任する一方、アーティスティックスイミングのコーチも続ける。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会スポーツディレクター。小谷さんが感激した組織委員会の温かさ
松岡 小谷さんがスポーツディレクターになられて、僕は「いよいよ小谷さんが本領を発揮するぞ!」とわくわくしているんです。表現力、英語力、行動力、リーダーシップ、すべてを兼ね備えたかたですから。
小谷 買いかぶりすぎです! 本当の小谷実可子は日々トレーニングをして、お天気がいい日には海でぼーっとしていたい人間ですから。
松岡 でも、実可子さんは「可能にして実らせる子」ですから。できる子なんですよ。
小谷 そう期待されて、いろいろなお役目をいただくのは好きなんです。チャンスをくださったかたに「任せてよかった」といってもらいたい一心で何とかやっています。“ええかっこしい”なんでしょうね。
松岡 僕と違って、失敗するイメージが一切ありません。新しく入られた組織委員会はいかがですか。
小谷 感動しました! 優秀な日本人がこんなにたくさんいるなんて、と。志があって、やる気に満ち溢れていて、英語も堪能で......。コロナ禍で組織委員会も非常に難しい状況にありますが、みなさんと困難を一つ一つ乗り越えていく毎日が、誤解を恐れずにいうと、楽しいです。
松岡 充実しているんですね。
小谷 はい。私自身はみなさんが期待しているスポーツディレクター像とは違うかもしれませんけど。パソコンの電源の入れ方を教わることから始めました(笑)。
松岡 え、どういう意味ですか?パソコンはもともとお持ちですよね。
小谷 いえ、持っていません。文章でのやりとりはこれまで、スマホにしゃべって文字に変換して、ピュッと送っていました。
松岡 それで問題なくやってこられたとは、ある意味すごいです。
小谷 組織委員会では、パソコンの操作でまごまごしていると、誰かがすっと現れて、「お手伝いしましょう」と助けてくれます。そういう親切心やスマートさにも感激しました。入る前はピリピリした雰囲気を想像していたんですが、実際は温かくて家庭的。みなさん、お仕事が大変でも、人としての優しさを忘れずに進めているからだと思います。たぶん、世間のかたがたがイメージする組織委員会とはだいぶ違うでしょうね。
松岡 小谷さんの力を思う存分発揮できる場所ですね。