『猫がこなくなった』
保坂和志 著/文藝春秋小説よりも猫について考えている時間のほうが長いと公言しているように、これまでも猫のいる日常を描いてきた保坂和志さん。
ある家では餌をもらうだけなのに、他の家では身体を触られても嫌がらず、また別の家では家主のことばに頷いて屋内についてゆく。
キャシー、レディ、イブ、小町、真央ちゃん。足を延ばす各家でそれぞれの名前で呼ばれている外猫を通じて、人間の意に沿うことのない猫の生態を伝える表題作をはじめ、9つの短編を収録した作品集。
不条理、現代人の不安という偏見に依らない読者数でいえば、カフカはマイナー作家だと記した「カフカの断片」も興味深い。
「#今月の本」の記事をもっと見る>> 『家庭画報』2021年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。