ミュージカル『王家の紋章』への出演も控える。2016年、2017年に続いて、ヒッタイトの王子イズミルを演じる。――お友達は相当驚いたでしょうね。この世界に入ってからのターニングポイントは?「僕はずっと自分に自信がなくて、いつもどこか“どうせ僕なんて”と思っていたところがあったんですが、周りの人のアドバイスを“こんな僕にまだ期待してくれているんだ。ありがたいな”と素直に受け入れられるようになってからは、随分変わったと思います。そのきっかけの一つが、つらくて逃げようとする僕を本気で叱って、なかなか破れない僕自身の殻を諦めずに叩き続けてくださった、演出家の鈴木裕美さんとの出会いです。今は大好きで仲良くさせてもらっているんですが、当時はめちゃくちゃ怖い存在でした(笑)。あの経験がなかったら、僕は今、ここにいないと思います」
――これが自分の仕事なんだなと自覚したのはいつ頃ですか?「やっぱり舞台に出るようになってからですね。出待ちの方がいらしたり、街を歩いているときに“平方くん!”と手を振ってくださる方がいることが新鮮で嬉しくて。そういう方たちの輪が広がっていく中で、あるファンの方が亡くなったことを知ったんです。“最後にやりたいことは何?と聞かれて、元基くんのお芝居が観たいと言っていたそうです”と別のファンの方が教えてくださって。僕がやっていることを生きる支えにしてくれていた人がいたことにまず驚いて、自分が携わらせてもらっている仕事への認識が甘かったことに気づかされました。それ以来、もっと真摯に向き合わなくてはと思うようになりました」
――確かに、エンターテインメントは人に力を与えてくれますよね。最後に、初主演ミュージカル『メリリー~』に向けた意気込みとメッセージをお願いします。「大きな劇場でコスチュームプレイをやるのも好きなんですが、この『メリリー~』は、誰の身にも覚えがあるような問題を、親友と出会った20年前に遡りながらシンプルに表現した作品。ぜひ多くの方に観ていただけたら嬉しいです。キラキラしていた頃の自分や、いろいろな人との出会いを思い出すことで、きっとお客さまも自分のことがちょっとだけ好きになると思うし、それは前へ進む糧にもなると思うんです。過去の結果である今は変えられないけれど、未来は変えられる。フランクが最後に何を思うかは、稽古を重ねていかないと僕にもわかりませんが、きっとお客さまと一緒に、新しい一歩を踏み出せるんじゃないかなと感じています」
平方元基/Genki Hirakata
1985年、福岡県出身。2008年に連続ドラマ『スクラップ・ティーチャー~教師再生~』でデビュー。2011年に『ロミオ&ジュリエット』のティボルト役でミュージカルデビュー。以降、『エリザベート』『マイ・フェア・レディ』『レディ・べス』『ダンス・オブ・ヴァンパイア』『サンセット大通り』『ローマの休日』といった大作ミュージカルに出演。ミュージカル『王家の紋章』は、2021年8月に東京・帝国劇場、9月に福岡・博多座で上演の予定。
ブロードウェイミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング』~あの頃の僕たち~
2021年5月17日~31日/東京・新国立劇場 中劇場 S席/1万2800円 A席/7500円 Yシート/2000円 U25/5000円 お問い合わせ/ホリプロチケットセンター 電話03-3490-4949
6月4日・5日/名古屋・愛知県芸術劇場大ホール 6月11日・12日/大阪・梅田芸術劇場メインホール
作曲・作詞/スティーブン・ソンドハイム 脚本/ジョージ・ファース 演出/マリア・フリードマン 出演/平方元基、ウエンツ瑛士、笹本玲奈、昆 夏美、今井清隆、朝夏まなと ほか
https://horipro-stage.jp/stage/merrily2021/