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「現代アート」を語ろう。ギャラリスト 小山登美夫さん、投資家 小池 藍さん、ジャーナリスト 鈴木芳雄さん

2021.04.21

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時間をかけて熟成した作家ほど長く価値が下がらない

鈴木 小山さんは、アーティストの価値が上がる要因は何だと思いますか。

小山 まず、今まで見たこともないようなアートをつくっていることでしょうね。


鈴木 奈良美智※1や村上 隆※2に出会ったときも、そう思った?

※1 奈良美智(ならよしとも)1959年生まれ。挑戦的なまなざしの子どもの絵が代表的なイメージで、世界的な人気を誇る。 ※2 村上 隆(むらかみたかし)1962年生まれ。日本画とアニメの平面性を接続した「スーパーフラット」理論を提唱。

小山 当時、日本の現代美術界は60~70年代にアメリカを席捲した抽象表現主義の影響で、抽象絵画一辺倒でした。その状況に対する閉塞感があったので、漫画やポップという文脈のある村上さんの作品に新鮮さを感じたし、怒りという個人の感情を描いた奈良さんの作品は、世界でもほとんど例がなく、すごくおもしろいと思いました。

鈴木 なるほど。しかも、小山さんはいち早く海外のアートフェアに進出し、世界が彼らを認めるきっかけをつくりましたね。

小池 作家は自分が所属するギャラリーがアートフェアに出展することで、海外のギャラリーやコレクターに知ってもらえる機会が増えるので、すごく大事ですよね。

小山 一方、マーケットだけでなく、美術館や評論家といったアカデミックな世界でも認められることは、アーティストの価値を高める条件です。アメリカはその辺がしっかりしていますが、日本では、まだアカデミズムではあまり評価されていない人の作品が、いきなりオークションでドーンと上がるといった現象が起こっています。

小池 そういう投機の対象になる作家の作品は必ず暴落するので要注意ですね。

小山 やっぱり、最初に所属ギャラリーというプライマリー・マーケット(一次市場)で作品を売り、そのうちアカデミズムで認められて美術館で展覧会を行い、やがてセカンダリー・マーケット(二次市場)であるオークションで売れるようになり、次第に値が上がるといった具合に、ゆっくり時間をかけてキャリアを積んだ人は、のちのち価値が下がらないんです。

一ついえるのは、お金目当てならなるべくちゃんとしたアートで高額なものを買うこと。100万のものが500万になるより、2000万が1億になる確率のほうが高いと思うので。

鈴木 僕も投資のために何を買うべきかと聞かれたら、草間彌生※3のペインティングをすすめます。自分では買えないですけど(笑)。マスコミはすぐ、昔は200万だった絵が100億になったなどと騒ぐけど、100億で売った人はもともと高くなってから買ってるわけで、最初の値段と単純に比べるのはおかしい。200万で買った人は純粋に好きで買っただけで、投資目的ではないんです。

僕も30 年以上前に買った杉本博司※4のプリントを持っていますが、僕も含め、コレクターにとって値上がりがうれしいのは、自分が目利きだと言われる誉れもあるからです(笑)。

※3 草間彌生(くさまやよい)1929年生まれ。日本を代表する前衛芸術家。網目模様や水玉模様をモチーフにした絵画を制作。※4 杉本博司(すぎもとひろし)1948年生まれ。現代美術作家。写真をはじめ、古美術、建築、造園、伝統芸能など、幅広い領域を横断。

[鼎談]今、現代アートに投資せよ「アーティストの値打ち」を大いに語ろう
杉本博司 すぎもとひろし(1948-)
日本海、隠岐 1987 ゼラチン・シルバー・プリント 世界各地の海を、水平線をセンターに捉えた同じ構図で撮り続ける「海景」シリーズ。©Hiroshi Sugimoto, Courtesy of Gallery Koyanagi

海外オークション 落札総額日本人アーティストトップ10(2019年データ)


[鼎談]今、現代アートに投資せよ「アーティストの値打ち」を大いに語ろう
(出所)「日本のアート産業に関する市場調査2019」*Artprice社提供データをもとに、アート東京/芸術と創造作成(抜粋)。

世界が評価する日本人アーティスト

海外オークションの落札総額ランキングから、日本人アーティストのみを抽出。トップ10のうち、藤田嗣治と葛飾北斎以外はすべて現代アーティストという結果に。草間彌生と奈良美智は国内外の双方で人気が高く、奈良は2020年初めて草間を抜いて、トップに躍り出た。また、杉本博司と河原温は国内より海外のほうが人気が高い。
撮影/本誌・西山 航 取材・文/大山直美
『家庭画報』2021年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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