ところで、こうした日本の現状について、国はどう考えているのか、文化庁の林 保太さんにもお話をうかがいました。
「近年、美術品の税制優遇は拡充されてきています。通達が改正され、以前は法人および個人事業主がアートを購入した場合、減価償却できる上限が20万円未満だったのが、平成27年以降、100万円未満に引き上げられました。また、2020年、重要文化財や登録有形文化財に認められている相続税猶予特例(相続税の8割を猶予する制度)が一定の現代アートにも適用されました」(林さん、以下林)
一方、文化庁は現代アートにかかわる美術館やギャラリーに対しても、さまざまな形で支援を行っています。たとえば、平成26年度からは毎年「優れた現代美術の国際発信促進事業」の募集を行い、海外アートフェアなどに出展するギャラリーに対して助成。
さらに、全国の美術館や博物館を「文化観光拠点施設」として支援しており、現代アートの分野では、寺田倉庫が天王洲にオープンした「
WHAT」も、民間企業初の認定を受けています。
「アートを資産として正当に評価することが、日本におけるアートの振興を進めていくうえで重要ですし、多くの人々がごく普通にアートを購入するようになり、生活が豊かになるとともに、現在活動中のアーティストを支える基盤が整えられていくという好循環をつくることが、今後とても大切になると思います」(林)
ちなみに、アート1点または1組の売却金額が30万円を超えると所得税がかかります。また、5年以上所有していたアートを売る場合は「長期譲渡所得」とみなされ、特別控除があるので、節税に。
「アートは株式などに比べて売買手数料が高く、取引も頻繁ではないため、短期売買には向きません。しかし、流通チャンネルを間違えさえしなければ、資産価値が大きく下がることもないので、最低5~10年はじっくり待ちましょう。5年で倍になることは珍しくなく、10万で買ったものが20万で売れ、それが50万、100万になるという、わらしべ長者的な楽しみも夢ではありません」(徳光)