日本が誇る世界的指揮者に密着 佐渡 裕 情熱の音楽人生 第4回(全7回)1989年ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝し、鮮烈なプロデビューをしてから32年。その溢れる情熱、カリスマ性、人間力で世界への扉を開け続け、活躍の場を広げているマエストロのこれまで、今、そしてこれからの指揮者人生に迫ります。
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音楽を伝える力
リハーサルはどのように行われているのでしょうか?佐渡さんの身体の動きや言葉を通して、音楽づくりの現場を体感してみましょう。
リハーサルの合間にリラックスしたムードで談笑する、佐渡さんと新日本フィルの皆さん。さりげない会話の中に演奏のヒントが生まれることもあるという。練習は種まきと水やり。本番に花を咲かせるように
クラシックの演奏会では最高の演奏を届けるため、数日前からリハーサルが行われます。今回のプログラムはベートーヴェンの交響曲(第6番・第8番)とモーツァルトのピアノ協奏曲(第20番)。
佐渡さんは初日に全体を通して感じをつかみ、2日目から少し細かい点に言及。すると音により活気が生まれ、当日午前のゲネプロでは音楽全体にぐっと立体感が増してきました。
「一小節の中にも音が膨らんだり緩んだり。楽譜に書かれていないことをどこまで感じ、音に立体感や色彩感を持たせるか。具体的にはハーモニーやモティーフの扱い、調性感などです。僕の腕の動きや呼吸、身体から発する何かを感じてもらえたかなと思います」と佐渡さん。
指揮者の繊細な動きから発するエネルギーを楽団員たちがキャッチし音で応える、音楽のプロ同士のコミュニケーションを見ることができました。
言葉だけではなく、身体全体を使って
イメージを伝えるようにしている ── 佐渡さん
リハーサルで使った楽譜ベートーヴェンが『田園』を作曲した地、ハイリゲンシュタットの小川やワイン畑も知る佐渡さんの書き込みが。この明るいヘ長調と、モーツァルトの陰ある二短調で、「光と陰のコントラスト」を演出。“指揮者・佐渡 裕”から伝わること
── ソロ・コンサートマスター 崔 文洙さん(チェ・ムンス)
佐渡さんとは20年ぶりの共演でしたが、相変わらずエネルギッシュ! 気さくでちょっとお茶目な感じも全く変わらず、嬉しかったです。『田園』のリハーサルも、大らかに明るい音色を響かせるように指摘されていました。
佐渡さんは身体も大きいので、オーラが放射されているのがよく伝わります。還暦とは思えないほど若々しいですね。指揮者は70歳からと言われますので、これからどう円熟・変化されるのか、とても楽しみです。
Information
特別公開!リハーサル動画
- リハーサル風景の動画をご覧いただけます。
〔特集〕日本が誇る世界的指揮者に密着 佐渡 裕(YUTAKA SADO)情熱の音楽人生
撮影/武田正彦 編集協力/三宅 暁 取材・文/菅野恵理子 取材協力/兵庫県立芸術文化センター、兵庫芸術文化センター管弦楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、すみだトリフォニーホール、スーパーキッズ・オーケストラ
『家庭画報』2021年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。