歩み続ける永遠の花の都 私たちを待つパリ 第3回(全6回)新型コロナウイルス感染拡大による激動の時代にあって、花の都、パリも新しい時代に向けて大きく変わろうとしています。環境や健康、次世代を考えたライフスタイルを提案する人々、パリ五輪を見据えた、数々の新しい文化施設など。次に私たちが訪れるパリは、さらに魅力的になっているでしょう。現地から、“パリのエネルギー”をお届けします。
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レストラン・ル・ムーリス・アラン・デュカス
ヴェルサイユ宮殿の「平和の間」を彷彿させるレストラン空間。卓上右側、氷を器にした料理はスズキの冷製で、スモークビーツのピュレ、ソルベ状にした自家製ヨーグルトと一緒に。長い休業を余儀なくされるなか、星付き、しかもパラスホテルのレストランはほとんど沈黙したままでしたが、ここ「ル・ムーリス・アラン・デュカス」では、ガストロノミーを家庭で楽しめるサービスを提供するなど、厨房の灯が消えることはありませんでした。
アラン・デュカス氏はかねてからSDGs(持続可能な開発目標)を体現する取り組みを料理界で実践してきましたが、彼の信頼を受けてシェフに就任したアモリー・ブウール氏の厨房ではそれが明白です。
仕入れるのは最善の漁や栽培方法による極上食材。一本釣りの漁師から直接届く魚の身はもちろん食卓の主役になりますが、あらもまた厨房でじっくり燻製にしてだしにするなど、時間と手間を惜しみません。食材に敬意を持ち、あますところなく美食に昇華させる姿勢。これからの真のガストロノミーの姿がここに見えます。
サンピエール(マトウダイ)とかぼちゃの一品。かぼちゃは魚のだしと一緒にソースにもなり、種も食感のアクセントに。作り手の人柄と畑の土まで熟知したうえで仕入れる食材。葉や茎の個性も料理に生かしきる。1988年パリ生まれ。モナコの3つ「ルイ・キャーンズ」を皮切りに料理人としてのキャリアをスタート。2020年春「ル・ムーリス・アラン・デュカス」のシェフに抜擢される。 Information
Restaurant le Meurice Alain Ducasse
228, rue de Rivoli 75001 Paris
- コースメニューの一例「ムニュデクヴェール」250ユーロ。 最新の情報は公式サイト等でご確認ください。
撮影/小野祐次 取材・文/鈴木春恵
『家庭画報』2021年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。