自然がくれる癒やしの力 日本の「新緑遺産」第3回(全13回)今、森の中を歩いていると想像してみてください。土の匂い、小枝を踏む音、鳥のさえずり、葉擦れの音、木漏れ日など、五感を通して自然が私たちに語りかけてくれます。新緑が美しくなるこの時期、自然の中で、また自宅で、「森の効用」を取り入れる暮らしを提案します。
前回の記事はこちら>> 森に遊ぶ人-ふくいひろこさん(「水円舎」主宰)
「緑に囲まれていただく一服にほっと心を安らげる」
「“瓶茶”はいつでも簡単に香り高いお茶をいただけるので重宝します」。今回は中国茶の龍井茶、翠玉茶を用意。インド更紗を裏張りした茶籠にインド製のほうろう皿、ドライフルーツを詰めたカンボジア製の草籠を組み、軽やかに。永楽吉祥花文茶碗で古典的なアクセントを。「茶室がなくてもお茶のもてなしを楽しみたい」という思いで、
茶箱あそびを始めたふくいひろこさん。試行錯誤を繰り返し、さまざまな箱を活用した日常を彩る茶箱を提案しています。
日頃より、御所の森や東山の散歩中にお茶を楽しんでいるふくいさんに、今回は外行きの茶箱の組み方のコツを抹茶と中国茶の2種で教わりました。
「大切なことはまず、持ち運びしやすいこと。そして道具が破損しないようにぴったり箱に収まること。布や袋で道具を保護すると安心です」。
抹茶は、茶碗、茶器、茶杓、茶筅、茶巾、振出という必要最低限の道具を用いて、コンパクトサイズの筒形の金箔文曲茶箱に収納。中国茶は、東山麓にある中国喫茶「好日居」の横山晴美さんに教わったという、茶葉を空き瓶に入れて湯を注ぐ“瓶茶”と軽量な草籠に収めた道具組。
「茶箱があればどこでも“自分の茶室”になります。きちんとした茶道具でなくても、自分の心ときめく見立てで十分。季節の移ろいを感じる森の中で、道具を広げていただく一服は驚くほどおいしいです。ぜひ、心落ち着く憩いのひとときを過ごしてください」。
「抹茶の場合は、保温ポットにお湯を入れて行けば温かな一服をいつでもいただけます」。道具は筒形の茶箱に隙間なく入れる。古清水写旅茶碗(安田浩人作)にぴたりと収まる白磁茶器(福本双紅作)。折り畳み式の茶杓(久野輝幸作)、白磁茶筅筒(福本双紅作)、晒し布で巻いた茶筅(写真下)、「崎陽軒」の醬油差しを転用した青磁竹形振出で遊び心を。