1985年史上3人目の中学生プロ棋士に。89年19歳のときに初めて獲得したタイトルが竜王でした。2017年12月5日対局分までの通算成績1955局中1391勝。勝率なんと0.7122。――「プロになる前から感情を顔に出さないように訓練してきた」と著書に書かれていましたが、10代前半からそういう意識をお持ちでいらしたのですか?
「それはですね、将棋が強くなっていくには感情を上手くコントロールしたり、自制することがとても必要なんですね。だから、自然にその術を自分なりに覚えていくということはあるんです。だからといって、いま、自分が完全にコントロールできているかというと、そんなことはまったくないんですけどね(笑)」
――将棋の実践を通して、ご自分で意識して感情を顔に出さない訓練をされていったということなんですね?
「はい、そうです。それも、顔に出さないだけではなく感情そのものをコントロールしなければならないんですね。喜怒哀楽は常に絶対あるのですが、それが対局中に起こったとき、瞬間的にわれに返れるかどうかは、実践のなかで失敗と反省を繰り返して身につけていくことになります」
――やはり、ご自身がもともと持っていらっしゃる基本的な性格が棋士に向いていたということなのでしょうか。
「あ〜、それはもしかしたらあるかもしれません。ただ、向いている性格というだけではなく、その人の性格に合わせた感情の上手なコントロールの仕方がきっとあるのだと思っています、はい」
――敗局のときの気持ちをリセットするには、どうされているのでしょう?
「そうですね〜、自分なりにその日のうちに総括してしまうようにはしているんですね。これ、実は勝敗関係ないのですが、そこで区切りをつけて一日で終わりにしてしまうところはあって。あとはまあ、忘れるんですね(笑)。若いときは何日も引きずって覚えていたり、忘れられないこともあるのですが、年齢を重ねれば自然に忘れるんで(笑)。厳密には忘れていないのかもしれないんですけれど、眠って朝起きたら、またリセットして次に向かうというのはすごく便利な機能というか。なので、睡眠の質は重要なんですね。あと、もうひとつ言うとですね、日が昇る前に眠ることってすごく大事なんです。経験的にいって、そのほうがなぜか絶対に切り替えやすいんですよ。まあ、そうそう徹夜する人も多くはないのかもしれませんが(笑)。対局ですごく遅い時間になることもあるんですけれど、朝日が出る前には何とか眠るようにしています」