自然との共存を追求する人間の叡智を注ぎ込んだカンティーナ
ペトラのオーナーは、自然の恵みを最大限に生かすためのカンティーナ（ワイン貯蔵庫）を作るべく、イタリア系スイス人建築家のマリオ・ボッタ氏に設計を依頼しました。マリオ・ボッタ氏は幾何学的な建築スタイルで知られますが、ペトラのカンティーナは、南トスカーナのなだらかな丘の連なりとの調和を重視し、半ば丘に埋め込まれたようなイメージで構築されました。つまり、大きな筒を丘の傾斜に合わせて斜めにカットしたようなデザインにしたのです。2000年代初めに完成したこのカンティーナは、現代建築家によるデザインワイナリーの先例として話題を呼び、同様なコンセプトのモダンな醸造所が各地に次々と誕生しました。
しかし、ペトラのカンティーナは見た目のインパクトの強さだけでなく、その構造も独特の発想に基づいています。例えば、葡萄に余計なストレスを与えることなく高品質なワインへと昇華させるため、収穫された葡萄をワイナリーの一番高い所で圧搾し、発酵はそれよりも低い場所で、熟成はさらに低い場所へと重力に従ってプロセスが進行するように設計されています。熟成庫の一番奥は、丘の深部である岩盤を何の加工も施すことなく露わにし、ペトラがどのような土地に生まれ育っているのかを如実に表現しました。
豊かな自然と人間の技術の融合。ペトラが目指すワイン造りの姿勢はカンティーナそのものに表れているのです。
左／カンティーナ最上部。収穫された葡萄は破砕・徐梗の後、ソフトプレスされ、床面に配置された開口部から注ぎ込まれて発酵へと進む。 右／横から見ると、カンティーナが丘の傾斜とほぼ同じ角度で造られているのがわかる。
バリック樽が並ぶ熟成庫。葡萄がワインへと変化する様は古来神の仕業と考えられ、そのミステリアスなイメージを照明で表現。 
