いつかぜひ共演したい!還暦を迎えた二人が描く夢
スタッフからの「見つめ合ってください」というリクエストに、目線を合わせられないと照れるお二人。恥ずかしくて見られないという佐渡さんは「しのぶさんは本当に可愛い人。心臓のドキドキが見えてくるようです」。大竹さんも「佐渡さんも可愛い人。お知り合いになれただけでも嬉しいです」。佐渡 今回は、僕の還暦記念企画ということなのですが、しのぶさんは還暦のお祝いはされましたか?
大竹 私は「大竹しのぶと60人の男たち」というトーク&ライブのパーティをブルーノートで開きました。身内や友人、俳優、演出家、ミュージシャン、女優さんも大勢来てくれて騒ぎました。60人の男性からメッセージをいただいたりして、もちろん父を含む60人です。蜷川幸雄さんや忌野清志郎さん、私にとって忘れられないかたも含めての60人。こんなにたくさんの人たちに巡り合えていたんだなと、改めて幸せだなぁと思いました。
そのとき、豊川悦司さんに「しのぶさんと撮影のロケに行くと金縛りにあってたような感じになる」と言われて(笑)。そうしたらさんまさんが「僕はいつもです」と言ってました(笑)。あとは特に何もしていません。まだ体力もあるし、楽しいことをたくさんしたいですね。
佐渡 僕も還暦は全然意識してなかったのですが、指揮者は60歳がスタートと言われています。
大竹 ええ!? 60歳からスタート!?
佐渡 オケのメンバーよりも年が上になっていくこともあると思います(オケ定年は60~65歳)し、年齢を重ねることで音楽の理解が熟成されて、例えばもっとマーラーを極めたいとか、ブルックナーを指揮させるならこの人とか、そういう境地になっていくのでしょうね。僕としては、あまり指揮する機会のなかったアメリカで仕事するとか、ヨーロッパでもまだ客演していないオケや、まだ指揮していない作品もありますし、兵庫県立芸術文化センターの芸術監督として先のプランも考えたい。でも引退して家で過ごしたり、ゴルフをしたい気もします(笑)。
大竹 私は何年か先まで決まっている舞台がありますが、もう少し生活をゆっくり豊かに過ごすことを考えたほうがいいのかなと思う自分もいます。自粛期間中の2か月間、「もう一度自分の味をやり直したい」と思って毎日料理を実際にしてみたら飽きちゃって(笑)。やっぱり芝居をすることがいちばん楽しいのかな。
佐渡 いつか舞台でご一緒できる機会があるといいですね。ミュージカルとか。音楽がキャッチーで話の流れも面白いし、僕大好きなんですよ。バーンスタインのミュージカルを大編成オケで上演したのですが、ミュージカルファンが聴きに来てくれて、「こんなにオケの音が豊かなんだ!」と興味を持ってくれました。多くの人間で一つの舞台を作っている喜びがダイレクトに伝わって、僕たちにとってそれも新鮮です。しのぶさんが歌ってくださったら最高です。
大竹 嬉しい、夢みたい! ぜひご一緒させてくださいね。
佐渡 裕さん(さど・ゆたか)指揮者。京都府出身。京都市立芸術大学在学中に指揮活動を始める。欧州の一流オーケストラへの客演を重ね、国内では兵庫県立芸術文化センター芸術監督、シエナ・ウインド・オーケストラ首席指揮者を務める。現在オーストリアのトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督としてウィーンを拠点に活動中。2020年に辻井伸行氏、2021年には反田恭平氏と共演したCDをリリース。大竹しのぶさん(おおたけ・しのぶ)女優、歌手。東京都出身。1975年に映画『青春の門』で本格デビュー。同年、NHK連続ドラマ小説『水色の時』に出演し、国民的女優となる。日本アカデミー賞最優秀賞主演女優賞など高い評価とともに、世代を超えて支持を受け、名実ともに日本を代表する女優として活躍を続けている。6月から、舞台『夜への長い旅路』に出演予定。 〔特集〕日本が誇る世界的指揮者に密着 佐渡 裕(YUTAKA SADO)情熱の音楽人生
撮影/江原英二〈Astro80〉 きものコーディネート/相澤慶子 ヘア&メイク/新井克英〈e.a.t…〉(大竹さん) 人見理沙〈LUZ Hair&makeup〉(佐渡さん) 着付け/小田桐はるみ(佐渡さん) 伊藤和子(大竹さん) 取材・文/菅野恵理子 撮影協力/アマン東京
『家庭画報』2021年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。