家族の会話から、俳優の父は異常なまでに吝嗇、母は麻薬の常習者、長男は酒と女にだらしなく、次男は肺を病んでいることが明らかになる『夜への長い旅路』。やがて家族間の確執と愛憎があぶり出され……。2021年に入って既に6本のテレビドラマに出演するなど、まさに注目の俳優・杉野遥亮さんが、心揺さぶる濃密な会話劇『夜への長い旅路』で、初舞台に挑みます。アメリカ近代劇の父と称されるユージン・オニールが、自身の家族をモデルに書いたといわれる傑作で、母メアリーを大竹しのぶさん、長男ジェイミーを大倉忠義さん、父ジェイムズを池田成志さん、そしてユージン自身が投影された次男エドマンドを杉野さんが演じます。稽古に入る前の杉野さんに、心境を伺いました。
――今回が初舞台となる杉野さん。出演が決まったときは、どう思われましたか?「やっぱり来たか、でも怖いな、というのが正直な気持ちでした。話をいただいたのが今から2年くらい前で、その頃はまだドラマや映画の経験もあまりなかったし、芝居のことが何もわかっていないような状態だったので。そのときに『夜への長い旅路』の過去に翻訳された戯曲もいただいたんですが、触れるまでにだいぶ間が空きました。それよりも舞台が来た衝撃と、大竹しのぶさんとご一緒するというインパクトが大きくて、どうしよう、自分に務まるんだろうかって、まだだいぶ先なのにドキドキしました」
――1912年の夏の別荘でのある一日の中に、家族の愛憎を描き出す本作品。どんな印象をお持ちですか?「登場人物の一人ひとりの中にある問題や課題があぶり出されていて、まさに今大切なことが詰まっているなと感じました。地球に今生きている人たちも、この時期に自分の中の問題や課題とどう向き合うか、その中で家族とどういうふうに関係を築いていくかということを、問われている気がするんです。読んでいると、登場人物たちが何に納得できていなくて、その根底に何が必要だったのかということも見えてきて、そこも今の僕たちとリンクしているなと感じました。コロナ禍で行動を制限されたり、思うようにいかないことが増えることで、それぞれの人が解決しなきゃいけない根本的な課題とか本質の部分が表面に出て、最近みんなイライラしているように感じるので」