自然がくれる癒やしの力 日本の「新緑遺産」第8回(全13回)今、森の中を歩いていると想像してみてください。土の匂い、小枝を踏む音、鳥のさえずり、葉擦れの音、木漏れ日など、五感を通して自然が私たちに語りかけてくれます。新緑が美しくなるこの時期、自然の中で、また自宅で、「森の効用」を取り入れる暮らしを提案します。
前回の記事はこちら>> 盆栽の森で空想散歩を楽しむ
森の奥へと誘う奥行きある景色をひと鉢に。中央の高い木は樹齢約15年のコニファーで、高さは25センチほど。周囲の八房杉とエゾマツは、奥に向かって徐々に低くすることで奥深い森を表現。白砂の小道の脇には、ヒナ草、ユキノシタ、バイカオレン、タマリュウなどの下草を添えた。彩花盆栽のお手本は、自然の風景。
心に残る眺めを小さな鉢に再現します1本の木を大自然に見立てる伝統的な盆栽を、より華やかで写実的な風景描写へと発展させた「彩花(さいか)盆栽」を提案する、清香園5代目の山田香織さん。
「古さや枝ぶり、鉢映りといった付加価値を含めて観賞し、樹格の向上を目指して育てる伝統的な盆栽の決め事を取り払い、木々に草花を添えて、風景をスケッチするように小さな鉢に再現するのが彩花盆栽です」。
小さな鉢と対比させたり、枝が密になるように育てたりすることで、より大きな木に見せるといった従来のテクニックも活用した、新しい盆栽の楽しみ方です。
「彩花盆栽のお手本は、自然の風景。山歩きをしたり、自然の風景を見に行ったりすることがより楽しくなるという生徒さんも多いですね」。小さな森を見つめて心を遊ばせれば、家にいながらにして森林浴気分が味わえます。
小さな鉢を集めて木立の連なりに見立てて。一本植えの小さな鉢でも、集めて飾れば森の木立のような雰囲気に。飾り台で高低差をつけたり、苔玉仕立てのものを交えたりするとより立体感が出る。手前から時計回りに、ヒノキの寄せ植え、八房杉、ハイビャクシン、コニファー2点。四季の移り変わりが感じられる落葉樹の盆栽。みずみずしい春の新緑から夏の深緑、秋の紅葉、そして冬の寒樹の枝ぶりまで、季節によって異なる姿が観賞できる落葉樹はおすすめ。写真は深緑のナツハゼの寄せ植え。2鉢を前後にずらして飾ることで奥行きのある風景に。彩花盆栽・入門編 小さな盆栽の作り方
高さ20センチほどの木を1本植えるだけの小さな盆栽でも、下草と組み合わせることで景色が生まれ、森で遊ぶ気分が味わえます。
作ったのは…「コニファーとヒナ草のミニ彩花盆栽」動物のミニチュアなどの添え物も、空想して遊ぶきっかけに。水やりは、1日1回が目安。日当たりと風通しのよい場所が適しているため、ときどき戸外に出して。「生き物と暮らしているような楽しさが味わえます」と山田さん。
基本の道具手前右から、ピンセット、ペンチ、はさみ、竹箸。このほかに、排水穴の直径より少し長い針金と鉢の高さ+直径の2倍程度の長さの針金を用意。短い針金に長い針金の中心を巻き、鉢底から排水穴に通しておく。
作り方下のフォトギャラリーでご覧ください。