1937年のパリ万国博覧会に出品されたミキモトのジュエリー“矢車”。全体を帯留として使用できるのをはじめ、11の部分からなるパーツは専用の工具で簡単に分解でき、中央の円形の部分が帯留に、パーツを足して髪飾りに…と、12通りの使い方ができる多機能ジュエリーです。
アコヤ真珠とサフィア、エメラルドを用い、「カリブル留め」や「ミル打ち」など、日本が誇るミキモトの職人ならではの繊細な細工の技法が随所に。日本の伝統的な錺職(かざりしょく)の技とヨーロッパの製作技術が巧みに融合した「ミキモトスタイル」を象徴する逸品に、パリ万博に集まったヨーロッパの人々が感嘆のため息を漏らしたと伝えられています。
この“矢車”にも見られる美しさと機能の両立は、ミキモトが大切に守り続けていることの一つです。真珠やダイヤモンドなどの宝石をしっかりと留めながらも繊細で軽やかに見えるセッティング、つけ心地や重量感、ひとつのジュエリーが長さやフォルムを変えて何通りにも楽しめる工夫など、きめ細やかな心使いとつくりの確かさは、世界のトップジュエラーのなかでも随一といって、過言ではありません。