パリでルーブル美術館を訪れた誰もが目にする、一枚の歴史画。J.L.ダビッドが描いた「戴冠式」の華やかな場面で、ナポレオン1世や皇后ジョゼフィーヌが身につけている王冠や豪華な装身具を手掛けたのが、ショーメです。1780年、マリ=エティエンヌ・ニトによって創設されたショーメ。メゾンの歴史には、皇帝ナポレオンが深い関わりをもっています。ニトが宝石店を開業して間もない頃、店の前で馬車を引く馬が暴れ出しました。馬車に乗っていたのは、何とナポレオン。暴れ馬をなだめ、暴走を阻止したニトに感謝し、その店舗に並ぶジュエリーに魅了された皇帝は、ショーメを王室御用達ジュエラーに任命したと言われています。
「ナポレオンの戴冠式」ジャック=ルイ・ダヴィッド画 / ルーヴル美術館 絵画部門蔵
皇后ジョゼフィーヌやマリー=ルイーズの頭上を飾ったティアラは当時の宮廷社会における垂涎の的となり、貴婦人たちはこぞってショーメにティアラやジュエリーを注文しました。特別な立場にある女性が特別な時に身につけるにふさわしい品格や優美さは、今日に至るまでショーメのジュエリーに受け継がれ、また一方でショーメは、現在でも世界各国の王室御用達ジュエラーとして、皇妃やプリンセスたちに一層の輝きを添えています。