名産地・名店で味わう、家庭で楽しむ 究極のアワビ三昧 第6回(全8回) 夏に旬を迎えるアワビは、磯の香りが清々しい美味なる食材。都心の名店で心ゆくまで味わいたい極上のアワビ料理やお取り寄せ情報をお届けします。
前回の記事はこちら>> 涼を呼ぶ“コリコリ”の水貝
懐石小室 小室光博さん
生のアワビはおいしいんですよ。最近は火を通すのが主流になっていますけれど、家族で行く熱海で、小さい頃からアワビの刺身を好んで食べていたらしいので、生好きなのかもしれませんね。
生アワビの王道が水貝。いいアワビを選ぶところから、料理が始まっているといってもいいと思います。殻から身がぷっくりと盛り上がって、はみ出しているようないいアワビなら、産地にはこだわりません。
今回は程よく柔らかく、うまみも甘みもある雌貝を使っています。黒アワビもサイズや身質がぴったりのものなら使うこともありますよ。
水貝殻からはずしたアワビは、縁の黒っぽいところと芯のところの食感の違いを味わえるように切り分け、氷で冷やした昆布だしに放つ。縁のコリコリとしたところ、芯の身の甘さが際立つ。あしらうのは輪違いきゅうり。もう一品のアワビそうめんは今はすっかり見かけなくなりましたが、贅沢の極み、というような料理です。
昔は本当に大きな、1.6~1.7キロのアワビもいましたから、かつらむきにして細切りにするという料理もしやすかったかもしれません。
アワビそうめん塩をして軽く締めてから薄くかつらむきにし、細く切ったもの。細切りになってもアワビそのものの風味が力強く感じられる。華やかなバカラに重ねたアンティークのベネチアングラスの色合いが、アワビの色を引き立たせる。最後はエゾアワビで和風のドリア。もち米の飯蒸しに薄切りをのせ、肝のソースをたっぷりかけてさっと焼きました。(談)
アワビの肝ソース 和風ドリアふわっと火の入った身に肝のソースがからんで、お酒の進むおしのぎに。ソースにはほんの少しバターを忍ばせて、肝のコクを生かす技が。エゾアワビの小ぶりなサイズがこの料理にはぴったり。小室光博さん昔はほんとに大きいアワビがありましたねぇ、と懐かしむ小室さん。手に持つのは今回使った雌貝アワビと黒アワビ。肝はもちろんのこと、口の軟骨も醤油漬けにして珍味にしてしまうほど、捨てるところがないとか。
Information
懐石小室
東京都新宿区若宮町35-4
- 昼8800円~(2階テーブル席)、1万6500円~(カウンター)、夜3万8500円~。ご紹介した料理の注文は応相談。 ※最新情報は公式サイト等をご確認ください。
〔特集〕名産地・名店で味わう、家庭で楽しむ 究極のアワビ三昧
撮影/本誌・坂本正行 取材・文/久保香菜子
『家庭画報』2021年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。