名産地・名店で味わう、家庭で楽しむ 究極のアワビ三昧 最終回(全8回) 夏に旬を迎えるアワビは、磯の香りが清々しい美味なる食材。都心の名店で心ゆくまで味わいたい極上のアワビ料理やお取り寄せ情報をお届けします。
前回の記事はこちら>> 中国料理の奥義をアワビ料理で体験
GINZA JOTAKI 上瀧 剛さん
アワビはうちのメイン食材なんです。いつもコースに組み込まれていますから、メニューはたくさんありますが、今日は古典の中国料理のテクニックで日本のアワビを料理してみました。“華技和粋”つまり中国料理の技で日本の心を表現する、といううちの店のコンセプトそのままの料理を選んでいます。
<広東スタイル>アワビの冷製 肝ソース前菜は房州の黒アワビで広東式料理法。2時間半紹興酒のたれで蒸し煮にしてからその汁ごと冷まして冷製にしました。中国では食べない肝をソースに使うところが和式。中華技法と和のセンスを融合した一品といえますね。
クラシカルな広東スタイルの蒸し煮にしてからたれに漬けたまま冷ました身は、ふわっと紹興酒と陳皮の香りが立ち上る。中国では使わない肝を、煮つめた紹興酒とすだち、中国醬油で中華風のソースにして。<上海スタイル>アワビの姿煮続いては中華のアワビらしい、上海式の姿煮です。
味を含みやすいエゾアワビを『葱焼鮑魚』という上海の伝統料理にしました。糖焼という、砂糖を焦がしたキャラメルの色が特徴の煮込みで、アワビの風味を引き出して煮込みます。
上海らしい“一人1個”というご馳走感を生かした、角煮風の甘辛味が上海風。たっぷりのたれはねぎの焼けた風味が香り、小さくても味が凝縮したエゾアワビは1時間煮込まれ、むっちりとした食感が味わえる。<四川スタイル>麻婆アワビ最後は私の地元、玄界灘の雌貝アワビを使って麻婆に。さっと油通しをすると香りが立って柔らかく、最も好きなアワビの一つです。得意の四川の代表的な料理である麻婆の強い味にも負けませんよ。(談)
上瀧さんが得意とする四川の調理法を生かし、四川では使わない生のアワビで仕立てた一品。油通ししただけのアワビのコリコリしつつも柔らかな身からは磯の香りが広がり、シャープな麻婆味との相性も抜群。特徴を生かして使い分け
そのものの味を生かしたい房州の黒アワビ、強い味をぶつけても負けない玄界灘の雌貝アワビ、味が含みやすい三陸のエゾアワビ。特徴を生かして使い分けます。
上左・雌貝アワビ、上右・エゾアワビ、下・黒アワビ。上瀧 剛さん日本のアワビは世界一という上瀧シェフ。通年使うので産地それぞれの特徴をしっかり理解してアレンジすることを大事にしている。今は房州を中心に時期ごとによいアワビを選んで料理によって使い分けている。
Information
GINZA JOTAKI
東京都中央区銀座6-5-13 銀座美術館ビル3階
- 昼、夜ともコース3万6300円~。 アワビ料理はコースの中に1品組み込まれる。その時期のアワビによってメニューは変動。 アワビ料理を増やす場合は予約時に相談を。 ※最新情報は公式サイト等をご確認ください。
〔特集〕名産地・名店で味わう、家庭で楽しむ 究極のアワビ三昧
撮影/本誌・坂本正行 取材・文/久保香菜子
『家庭画報』2021年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。