調整役を頼まれることが多いという渡辺さん。交渉の鍵を問われ、「『選手のため』といってお願いすれば聞いてもらえます」。2021年10月の世界選手権は新たな産業革命の第一歩
松岡 渡辺さんはスポーツがこれからの産業の中心になるとおっしゃっていますが、詳しくお聞かせいただけますか。
渡辺 18、19、20世紀の産業は重工業中心で、その後、ITが中心になっていきました。そして、21世紀はスポーツで産業革命を起こす時代だと、僕は考えているんです。スポーツは人間の生活になくてはならないもので、趣味のように捉えるのは違う。特に日本だけでなく、世界中が高齢化社会になっている現代ではとても重要です。人口の50パーセント以上が70歳以上の社会になったとき、何が最も必要かと考えたら、やっぱり健康なんですよ。誰もが「ピンピンコロリ」、つまり寿命が尽きるまで元気に長生きして、コロリと死ぬのが理想なわけです。社会の中心にスポーツがあって、みんながそんな人生を送れるようになれば、各国の社会保障費も減り、財政も少しは楽になる。そういうふうに社会構造を変えていかなければなりません。
「2021世界体操・新体操選手権北九州大会」開催発表の記者会見。右は小川 洋前福岡県知事、左は北橋健治北九州市長。写真提供/福岡県「21世紀はスポーツで産業革命を起こす時代。スポーツで高齢化都市を活性化したい」── 渡辺さん
渡辺 2021年10月に体操、新体操の世界選手権を開催する福岡の北九州市は、19、20世紀に栄えた地域ですが、現在は日本で一番の高齢化都市で活気がない。来年の開催地であるイギリスのリバプールも同様です。この2つの都市に世界選手権を持っていくことで、どう活性化できるか。スポーツがどんな産業革命が起こせるか。試そうと思っています。
松岡 それは楽しみです! 読者のみなさんにも、東京2020に続き、世界選手権も注目してほしいです。
渡辺守成さんより〜
対談を終えて
修造って人はおもしろい人だ。初めて会ったのに、いきなり懐に飛び込んでくる。それに対して、こっちは警戒感も不快感も湧いてこない。「やられた」って感じだ。
あとは、もう彼のペースだ。珍しい日本人だ。世界中で厄介な人たちを相手にしているので「前さばき」は得意なはずだが、彼にはやられた。
こんな人が世界に出て、世界を相手に戦ったらおもしれぇだろうなと会談中はずっと考えていた。結局、最後まで彼のペースで会談は終わった。
修造、世界に出ろ!何ができるかわかんねぇけど、お前ならなんかできる。お前の体もパッションも日本という器じゃ入りきらない。世界はおもしれぇぞ。
撮影/鍋島徳恭 スタイリング/中原正登〈FOURTEEN〉(松岡さん) ヘア&メイク/井草真理子〈APREA〉(松岡さん) 取材・文/清水千佳子 撮影協力/有明体操競技場
『家庭画報』2021年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。