キッチンガーデンは「立ち上げ(レイズドベッド)花壇」で。野菜に花を添えたカラフル輪作で健やかに
「レイズドベッド(立ち上げ花壇)」という限られたスペースに、多種多様な野菜や花が植わった「十勝千年の森」のキッチンガーデン。野菜とはこんなに美しいものだったのかと気づかされる。観光庭園が多い北海道の中でも、スケールが大きなガーデンとして知られる「十勝千年の森」。その一角にあるのが、園芸好きの人気を集める「キッチンガーデン」です。
野菜がどういうプロセスで育つかがじっくり見られる場で、畑ではなく、あくまでも庭。野菜と花を混在させ、色や形のコーディネートにも気を配っており、野菜の美しさにハッとさせられる、他に類を見ないガーデンです。
キッチンガーデンの魅力の一つは、「レイズドベッド(立ち上げ花壇)」と呼ばれる菜園自体のつくりにあります。
舞台はレイズドベッド(立ち上げ花壇)地面より一段高くなった「レイズドベッド(立ち上げ花壇)」は見た目に美しいだけでなく、作業がしやすく全体が見渡しやすく、作物に合わせた土づくりができ、水はけのよい状態を保ち、寒冷地では春先の地温が上がりやすいなど、機能的にも優れている。野菜は地面ではなく、木枠で囲まれ、一段高くなった大きなボックスの中に植えられているのです。緩やかに傾斜した敷地に大小十数個のベッドがバランスよく点在するさまは、それだけで美しい風景になっています。
各ベッドには多品種の豆のベッド、ハーブが中心のベッドなど、それぞれテーマがあり、なかでもカラフルで壮観なのが、下の写真の野菜の輪作(ローテーション)を行うベッド。
レイズドベッドのサイズは180×90センチ。写真のベッドに植わっているのは、手前からスイスチャードやビーツ、ケール、ジャガイモ、豆の4種。それぞれの間に土壌中の害虫を防ぐカレンデュラ(キンセンカ)を配置。各作物の位置を毎年ずらしていくことで土壌中の栄養バランスが保てる。イラストはそれを畳1畳分のコンパクトなベッドで再現した例。植えているのは、ホウレンソウの仲間、アブラナ科の野菜、ジャガイモ、豆の4種。同じ場所で同じ野菜を栽培し続けると土壌の栄養バランスが崩れ「連作障害」を引き起こすので、毎年区画をずらして育てているのです。
また、野菜同士にも相性があるため、よい影響を与え合うものを選び、順番も考えて植えることが大切だそうです(6月9日配信予定の記事で詳しく紹介します。または家庭画報本誌の87ページ「コンパニオンプランツ」を参照ください)。
「この方法なら限られた面積の庭でも、いろいろな作物をオーガニックで元気に育てることができます」と語るのは、ヘッドガーデナーの新谷みどりさん。皆さんもチャレンジしてみませんか。
多彩な野菜4種と花の組み合わせプラン
下のフォトギャラリーでご覧ください。 Information
十勝千年の森
アクセス | 北海道上川郡清水町羽帯南10線 |
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入園料 | 1200円、小中学生600円、未就学児無料 |
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TEL | 0156(63)3000 |
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開園時間 | 4月24日~10月17日 9時30分~17時(9~10月16時) |
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- とかち帯広空港から車で60分、JR十勝清水駅からタクシーで15分(約3000円) 日高山脈と十勝平野の接点にある雄大なスケールの庭園。400ヘクタールの敷地内には世界的なガーデンデザイナー、ダン・ピアソン氏が設計した4つの庭(アースガーデン/大地の庭、メドウガーデン/野の花の庭、フォレストガーデン/森の庭、ファームガーデン/農の庭)がある。電動の乗り物「セグウェイ」によるガイドツアーやチーズ作り体験(期間限定)も楽しめる。
監修=新谷みどり 撮影=大泉省吾 取材・文=大山直美 イラスト=三好貴子 協力=十勝千年の森 ※この特集で紹介した栽培例は、北海道・十勝地方で実施されたものです。地域や気候により、適する植物や植え付け時期などは異なります。
『家庭画報』2021年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。