きものダイアリー

松本幸四郎夫人・藤間園子さんが案内する「吉野間道」の魅力

2021.05.31

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白磁霞

「江戸の粋を感じる洗練された色。自然からいただいた色には光に映し出される奥深さがあります」
「白磁霞」。矢車附子で染めた糸で表現した白地が白磁の手ざわりや霞がかった光景をイメージさせる。きもの/藤山千春(錦霞染織工房) 帯/桝屋高尾(翠光) 帯揚げ/和小物さくら 帯締め/道明 バッグ53万9000円/コンテスブティック 帝国ホテルプラザ店

培った技術が生むオリジナルの意匠


藤間 吉野間道の由来は江戸時代に遡るそうですね。


藤山 豪商の灰屋紹益(はいやしょうえき)という人物が吉野太夫に名物裂を贈って、太夫がそれをとても気に入ったことから名付けられたそうです。「間道」というのは茶人に好まれていた縞模様の織物のことで、お仕覆など茶器を包む生地として使われていました。

臭木で染めた鮮やかで淡いブルーの帯地

臭木で染めた鮮やかで淡いブルーの帯地。

藤間 とても品があって、グログランリボンのようでお洒落だと思いました。色と線だけでとてもシンプルに表現されていますが、どの生地も表情が違って見えます。

藤山 浮き織りの技法で縞や格子を表す織物なので、平織りの薄い生地の上に間道の縞柄が地厚に織られるのが特徴です。その浮き織りに光が当たると反射して光沢を放ちますから表情も豊かですよ。美しい織りはいろいろありますが、この立体感のある畝が強く出る面白さは吉野間道にしか出せないのではないでしょうか。

藤間 デザインはどういうところからインスピレーションを受けるのですか?

藤山 50年かけて積み重ねた経験でデザインに柔らかさや強さを出せるようになりました。初めの頃は間道の縞ができたことに満足していて、縞の下の地をぼかしにするとか、絣にするとか、緯に間道を入れれば格子の間道にもなりますが、そうした技術が私にはありませんでした。でも無地だけだとつまらないですから、技術を身につけることでそうした表現ができるようになりました。間道という縞を生かすことを大切にして考えたデザインは、すべて私のオリジナルです。

絹糸を染めている優子さん

千春さんの母方の故郷である八丈島から取り寄せた臭木の実を煮詰めてできた青い色の染料で、絹糸を染めている優子さん。何度かに分けて少しずつ染めていき、この作業の回数で染まった青色の濃度が変わる。

木枠に巻き取られた糸

木枠に巻き取られた糸。工房の糸はすべて草木染めに美しい色合いで、寒色系も暖色系も豊富な色が揃っている。

藤間 作品を作るときは使う色を選んだ時点で完成品は見えていらっしゃるのですか?

藤山 いいえ、作ってみて面白いと思うものは、最初に計画していたものではないですね。機に縦糸をかけてみて経糸を入れてみたときに、こんなことができるのだという発見があって生まれるのが新しいデザインです。ですから機に座ってから柄は決まるんですよ。

藤間 色づかいにも江戸の粋を感じますが、江戸好みは意識されていますか?

藤山 特別に意識してはいませんが、東京生まれの東京育ちですので、美術館などに行って目にした焼物や布地などが少しずつ参考になって、それが映し出されるのでしょうね。これを機会に多くのかたに吉野間道を知っていただけたら嬉しいです。

実際に生地を織る作業を見学

千春さんから機の仕組みについての説明を受けながら、実際に生地を織る作業を見学。

松本幸四郎夫人・藤間園子さんが案内する「江戸の手仕事」

表示価格はすべて税込みです。
撮影/中村 淳(静物) 細谷秀樹(人物・取材) 着付け/伊藤和子 ヘア&メイク/AKANE 構成・文/山下シオン

『家庭画報』2021年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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