――歌舞伎と日本舞踊という伝統芸能の担い手として、幸四郎さんが大切になさっていることは何ですか?「先人を尊敬する気持ちと、与えられた作品や役に誰よりも愛情を持つこと、でしょうか。まず習う、真似る、なぞることから始まるのが僕らの世界。常に純粋な気持ちでそれができるのは、その作品や役をつくられた方、受け継いでこられた方への尊敬の念があるからだと思っています。災害や戦争や時代の移り変わりを経ながらも生き続けてきた歌舞伎や踊りを、今なくすわけにはいかない、なくしてたまるか、という強い思いが生まれるのも、先人への尊敬の念があるからこそ。今となっては希少な生き方かもしれませんが、こういう生き方もちょっと変わっていて面白くないですか?と言いたいですね(笑)」
――20代の頃から“計画好き”だとおっしゃっていた幸四郎さん。今も変わらずそうなのでしょうか?「大好きですね、計画は。いまだに作曲がしたいと思っていますし。演出や振付、脚本を書くということは、少しずつ実現してきたんですけれども、音楽だけはまだやっていなくて。そんなふうに、いつかこれをやってみたいとか、できたら面白いなと考えながら計画することは、僕にとっては気分転換でもあるんです。だから5年でも10年でもずっと思っていられる。というか、どうにかして早く実現しようとはあまり思っていないかもしれない(笑)。締切りや初日ができた時点で、苦しみも生まれてきてしまうので」
未来座SAI第1回公演では、4演目中2演目に出演し、うち1演目では演出・振付も手がけた。「僕にとっては、踊りに夢を持っている様々な流派の舞踊家と出会い、刺激をもらえる場です。そういう方たちを多くの皆さんに知っていただきたいという思いがあります」