先頃、2024年5月に公開予定の映画『鬼平犯科帳』の主役・長谷川平蔵役に抜擢されたことが発表された。祖父・八代目松本幸四郎(初代白鸚)や叔父・二代目中村吉右衛門の当たり役だっただけに期待は高まる。――計画、言ってみれば夢を、着実に形にしていらして素晴らしいです。コロナ禍を機に新たにハマったことなど、ありますか?「もう平凡のど真ん中ですよ。パン作りにハマり、本棚を買い、犬を飼い始めて、髪を染めて……と、大勢の人がハマったことの王道を行った感じなので(笑)。最近ハマっていることは、うーん、何だろうなあ……そういえば、パンに塗ってトーストするだけでカレーパンみたいになるペーストには、ちょっと感動しました。表面がカリカリになるんです。今いちばんやりたいことであれば、断然、家の片付けですね。コロナ禍で芝居の道具が増えてしまって」
――それはどういうことでしょう?「これまで、ふた月続けて歌舞伎に出ないことがあまりなかったので、常に何かしらの芝居の荷物を劇場に預けている状態だったんです。それが全部うちに戻ってくることになったら、それだけでびっくりするような量で。実家へ行くとまた恐怖で、父が“これ、君の小道具だろ? 出しておいたから”と(苦笑)。この間は“こんなものが出てきたよ”と、僕の大学1年の時の成績表を渡されました(笑)。そんなものまでわざわざずっと取っておかなくても……と思ったんですが、考えたらうちもそうなんですよね。先日、探し物をしていたら、小さかった頃の子供たちのものがいろいろ出てきて、本来の目的を忘れそうになりました(笑)」
――懐かしくて、つい見入ってしまいますよね。最後に『夢追う子』への意気込みとメッセージをお願いします。「夢を抱くことが1歩でも半歩でも前進するエネルギーになることを僕たち自身も感じながら、2年にわたって取り組んできた作品です。全員が未知の領域に飛び込み、何とかすごい作品をつくろうと挑んでいます。これだけのチームで生でお届けする舞台。ぜひとも、その大きなエネルギーを受け取っていただけたらと思います」
十代目 松本幸四郎
歌舞伎俳優
1973年、東京都出身。1979年に三代目松本金太郎を名乗り初舞台。1981年に七代目市川染五郎を襲名し、2018年に十代目松本幸四郎を襲名。端正な容姿に華と実力を兼ね備え、古典の名作はもちろん、復活狂言や新作歌舞伎、また劇団☆新感線をはじめとする歌舞伎以外の舞台や映像作品でも活躍している。出演するBS時代劇『大富豪同心2』(全9回)が、2021年5月28日よりNHK BSプレミアムで放送予定。
第4回 日本舞踊 未来座=祭(SAI)=
『夢追う子』
6月4日~6日(全7公演)/国立劇場 小劇場 全席指定/8000円(25歳以下割引等あり) お問い合わせ/ヴォートルチケットセンター 電話03-5355-1280
構成・演出/松本幸四郎 振付/水木佑歌、西川大樹、若柳里次朗、花柳大日翠 音楽/仙波清彦 テーマ曲作曲/久米大作 脚本/鈴木英一
出演/松本幸四郎 ほか
https://nihonbuyou.or.jp/Performances/detail/351