北海道「十勝千年の森」の新谷みどりさんに学ぶ 美しき菜園ガーデン 第8回(全10回) 家庭菜園の楽しみは、安全でおいしい野菜を食べられるだけでなく、生長する美しい景色を日々間近で観賞できること。国内外で農業と園芸を学び、独自の視点で菜園づくりに取り組むヘッドガーデナー、新谷みどりさんに毎日見ていて惚れ惚れする菜園のコツを聞きました。
前回の記事はこちら>> 風景になる木の枝のウィグワムで、豆の栽培を楽しむ
あと一つご紹介しておきたいのが、さまざまな豆が植わったレイズドベッドです。
育てているのは、十勝の豆農家から種を譲り受けた「黒千石」「白花豆」「紅絞り」などの在来種。地元の大切な財産である種を採取して保存し、増やすことも目的の一つです。
右・完成した豆のウィグワム。脇の小枝を生かすと、横方向に別の材料で編み込みを入れる必要がない。中・約20日後。左・約2か月後。もはや支柱は覆い尽くされている。枝を使った支柱は、組まずに1本ずつ立ててもよい(ピースティック)。「白花豆」のようにツルを長く伸ばす豆には支柱が必要ですが、ここに立つウィグワムは柳製のトマトのそれとはだいぶ様子が違います。材料はシラカバの枝。小枝がよく分岐した枝を選び、そのまま生かすことで、全体にツルが絡みやすく、やわらかな表情のウィグワムになるのです。
庭木を剪定した枝が案外かっこいい支柱になるかもしれません。「十勝千年の森」ではここ以外のベッドでも、日本の在来種だけでなく、欧米の伝統的な品種「エアルームシード」(
第5回を参照)など、実やサヤの色・形・大きさの個性を楽しむ、多種多様な品種の豆を育てています。
十勝の在来種である大豆「黒千石」。通常の黒豆より小粒だが、高い栄養価がある。前述のとおり、豆類は根を通じて土を肥やす働きがあるため、他の野菜と一緒に植えるとよい影響を与えてくれます。
左・「黒千石」の花。右・同じく在来種「十六ささげ」の花。サヤが長く、30~50センチほどになる。北海道では「カッコウが鳴いたら豆を蒔け」という言い伝えがあるそうで、ここは十勝でも山麓で遅霜が降りるため、豆やトマトなどを植えるのは6月以降。
新谷さんいわく「本当にカッコウが鳴かないうちに植えると痛い目に遭うので、鳴くまでは絶対に植えないと決めています」。
6~9月が勝負という、長い冬を実感させる言葉でした。
在来種の豆の採取
キッチンガーデンでは十勝の豆農家から譲り受けた種を育てて品種を紹介し、食べて楽しむだけでなく、種の採取にも取り組んでいる。
写真はインゲンマメ「紅絞り」の種を採取しているところ。豆自体がそのまま種になるため、からからに乾くまでサヤごとしっかり乾燥させた後、豆を取り出して保管する。
目と舌で楽しむカラフルな豆
豆類の中にも、カラフルな色や斑模様、ユニークな形のサヤなど、中身・サヤともに個性豊かな品種が数多くある。
カラフルな豆の写真は海外の品種。種の自家採取はできないので、もっぱら食用で楽しむのみだが、色鮮やかな見た目が料理を華やかにしてくれる。
豆の支柱の作り方
下のフォトギャラリーでご覧ください。 監修=新谷みどり 撮影=大泉省吾 取材・文=大山直美 イラスト=三好貴子 協力=十勝千年の森 ※この特集で紹介した栽培例は、北海道・十勝地方で実施されたものです。地域や気候により、適する植物や植え付け時期などは異なります。
『家庭画報』2021年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。