「花摘み庭」の舞台は、世界一美しいといわれた庭園
日高山脈の麓に広がるファームガーデン全景。多種多様な野菜や花が植えられたレイズドベッドが点在している。手前に見えるのは6月号で紹介した、柳の枝で組んだトマトのウィグワム、左奧はガーデンカフェ。右奥には宿根草が中心のメドウガーデンが続く。ここで長時間過ごしていると、人間も自然の一部であることが実感できる。「十勝千年の森」は日高山脈の麓にある雄大なスケールの庭園で、面積はなんと東京ドーム85個分。敷地内には4つの庭があり、世界的なガーデンデザイナー、ダン・ピアソンさんが手がけた「アースガーデン/大地の庭」と「メドウガーデン/野の花の庭」の2つは英国のガーデンデザイナーズ協会主催の「SGD Awards2012」で大賞と国際賞を受賞、「21世紀最良の庭」と評されました。
新谷さんはわずか数名のガーデナーチームを率いてこの広大な庭を管理しており、ピアソンさんが全幅の信頼を寄せる存在。いわば建築家と名棟梁のような関係です。
ファームガーデンは4つの庭のうちの一つで、来場者に「農」と「食」と「庭」のつながりを感じてもらうための場。すべてオーガニック栽培が基本です。花を摘む庭を菜園と混在させているのは、生活を彩る花を育てることも「農」の一つと考えていることや、花は花粉を媒介する昆虫を呼びやすいことなどが理由だそうです。
「私たちは日本古来の里山のあり方を大切にしています。森と人の営みをつなぐのが庭であり、野菜や花を育てて収穫する農業をテーマにしたファームガーデンは、最も人の暮らしに近い庭といえます」と新谷さんは語ります。
監修=新谷みどり 撮影=大泉省吾 取材・文=大山直美 協力=十勝千年の森 ※この特集で紹介した栽培例は、北海道・十勝地方で実施されたものです。地域や気候により、適する植物や植え付け時期などは異なります。
『家庭画報』2021年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。